日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回は、氷河期世代を深掘りする。
1990年代半ばから2000年代初頭、バブル崩壊の影響で日本は未曾有の就職難に直面しました。「就職氷河期」と呼ばれるこの時期に社会に出た世代は現在40代後半から50代前半で、約1700万人と推計されます。
この世代ドンぴしゃなのが、女優の吉瀬美智子さん(50)です。
1700万人のうち非正規雇用は約370万人、不本意に非正規で働く人は約37万人。収入の不安定さ、老後資金の不足、住宅確保の問題に長期的に直面しています。
当時は新卒採用が極端に絞られ、内定取り消しや不採用が相次ぎ、やっと入社できても初任給は12万円前後。厳しい環境で短期退職する例も多く、派遣や契約社員を転々とする状況が続きました。その一方で今春の新卒初任給は30万円台に上がり、氷河期世代からは「羨ましい」「高すぎる」との声も。待遇改善は喜ばしい一方、自分たちが取り残されたとの不公平感が拭えません。
収入の低さは老後にも直結します。国の推計では氷河期世代の4割が65歳時点で月10万円未満の年金しか受け取れない可能性があり、親世代の介護や住宅問題も重なります。
氷河期世代にとって住宅確保も大きな課題。非正規雇用が多く収入が不安定なため住宅ローンを組みにくく、持ち家率は他世代より低い水準にとどまっています。結果として長期にわたり賃貸生活を余儀なくされ、高齢期には家賃負担が重くのしかかります。保証人が確保できず住まい探しに苦労するケースも少なくありません。安定した居住環境を持てないことは老後不安を一層深刻にし、生活基盤を脆弱にする大きな要因となっています。