■「年金だけに頼る層」が無視できない割合に
政府や政党は正規雇用への移行支援や学び直し策を掲げていますが、対象は氷河期世代1700万人のごく一部。むしろ「望んでも正規雇用につけない人」をどう支えるかが本質的課題で、労働力不足の中でこの層を活用できないことは社会的損失です。
現在のZ世代にとっては、売り手市場で内定を複数持てるなど選択肢が豊富な状況。そのため氷河期世代の苦労は理解しにくく、「何をそんなに文句を言っているのか」と感じる人も少なくありません。たった数年、あるいは10年単位の差で経験は大きく異なり、世代間で理解のギャップが生まれるのも当然でしょう。
「氷河期世代が高齢期を迎えると、生活基盤を持たず年金だけに頼る層が無視できない割合に達する恐れがあります。少子化で若年人口は減少し、社会保険料の負担は若い世代にのしかかります。氷河期世代の支援は彼らだけでなく社会全体の安定にもつながる重要な取り組み。政策の焦点は世代ではなく、望んでも正規雇用につけない人を救うことに置くべきで、制度の立て直しを先送りすれば、そのツケは次世代に回ると考えられます」(社会部記者)
ネット上でも「自己責任で片付けられない問題」「支援が一部だけで広く考えるべき」「氷河期支援は若い世代の負担軽減にもなる」といった声が散見されます。
報われないとされる氷河期世代の声は個人の愚痴ではなく、社会全体が直面する未来への警告です。「望んでも安定した雇用につけない人」をどう支えるか。的確に支援が届く仕組みを整えることこそ、日本社会が持続的に発展するための鍵となりそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。