■『アンパンマン』アニメ化を改変した事情は…

 ミュージカルを上演し、残すトピックは「アンパンマン」のアニメ化のみとなった。これで盛り上がるかと思いきや、アニメ化されるまでのエピソードは、史実に改変が加えられそうだ。第26週の公開されているあらすじによると、嵩はテレビアニメ化の話を断るが、のぶがプロデューサーの熱意を伝えることで、嵩が引き受けることを決めるようだ。

 史実では、1985年に日本テレビの武井英彦プロデューサーがアニメ化を申し出るが、日本テレビ内では反対の声が強かっという(やなせたかし著『アンパンマンの遺書』より)。その声の内容は、出典は定かではないが、アンパンマンが自分の顔を与えるという設定の改変と、スポンサーのパンメーカーからの「ばいきんまん」の削除要求だったようだ。

 やなせ氏はこれを受け入れなかったが、武井氏は屈せず何度も企画を提出したことで、3年がかりで企画が通ったそうなのだが(同出典)、ドラマでは、渋る嵩をのぶが説得するという流れで、それほど大きなトピックにはならないようだ。これは、ドラマチックではあるが、生臭い大人の事情を朝ドラの最終盤で描きたくないという事情もあったのだろう。

 9月16日放送の第122話から、のぶと嵩の同級生で、中国で少年に命を奪われた岩男(濱尾ノリタカ/25)の息子・和明(濱尾・二役)が唐突に出てきたが、これも、苦し紛れにトピックをひねり出したような気がする。アニメ化までの経緯が描かれていれば、不要だったかもしれないし、もっと盛り上がっていたかもしれない。民放局のヒット作をフィーチャーしたくないと事情もあるのかもしれないが……。

 こうなったらいっそ話題作りで、人気キャラの八木と蘭子をくっつけるのは、ありかもしれない。序盤からつまづいて、視聴率の歴代最低を記録した前作『おにぎり』に比べると、評価が高く、大きな話題になった『あんぱん』。好調な視聴率とともに、内容も最後まで盛り上げてほしい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。