■『DOPE』の設定も難しかったか

 序盤の『DOPE』はコミカルなシーンも多く、高橋は硬軟自在な中村の演技を間近で見て、シリアスとコミカルのさじ加減を学ぶ絶好の機会だった。実際、7月25日放送の第4話では、“変身”の異能力で才木の姿になった犯人と、才木自身が鉢合わせして驚く演技は、X上で、《自分が2人いた時の海人のリアクションが良すぎる》などと大ウケで、高橋がコメディでもイケそうだと思わせた。

 ただ、それ以外のコミカルなシーンは、シリアスなシーンの演技とのバランスが悪く、高橋はどこかやりにくそうにも感じた。それは、中村や井浦新(50)という、演技技巧者な俳優たちに押されてしまったのかもしれない。

 後半になると、特捜課メンバーが殺されるシリアス展開に。母と妹を巻き込んでしまうなど、才木にとっても苦悩の連続で、高橋はいつもの演技に終始。怒りを爆発させる演技は良かったが、いかんせんストーリーは二の次の異能力バトルがメインなので、その演技は目立たず、新しい高橋を見ることなくドラマは終わってしまった。

 体調不良で急きょ『24時間テレビ』(日本テレビ系)の出演をキャンセルした高橋。もしかすると『DOPE』の撮影中も、体調が万全ではなかったのかもしれない。10月公開の時代劇映画『おーい、応為』では絵師を、芳根京子(28)と共演する11月公開の映画『君の顔では泣けない』は、男女の心と体が入れ替わる役を演じる高橋。こちらでひと皮むけた高橋を見たい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。