■炬太郎ロス、俳優・岸優太をもっと見たい

 本作はシナリオが素晴らしかった。登場人物を3人にすることで、人物の特徴や個性を際立たせ、心の変化を丁寧に描いている。だから、見ている側は炬太郎に感情移入をする。炬太郎の優しさ、悲しみ、とまどいがグイグイ入ってくるのだ。また、「満月に黒い雲がかかる」といった自然現象で、状況の変化と時間経過を表現するのがとても上手だった。脚本、演出、芝居、すべてのバランスとクオリティの高さに、毎話感動があった。

 そして岸の、炬太郎のとまどいや葛藤、喜びや悲しみといった繊細な心の動きを、自分のものにした芝居が素晴らしかった。てんとの奇跡のような出会いと、小さな幸せにあふれた日々の暮らしが、確実にそこにはあった。この素晴らしい作品での経験は、次の岸をきっと助けるだろう。

 岸の芝居は、夏に公開する映画『Gメン』(東映)が予定されている。ヤンキー青春漫画が原作で、非モテ・問題児の高校生を演じる。高校生役といえば、デビュー前に出演していた『近距離恋愛~Season Zero~』(日本テレビ/2014年)を思い出す。幼なじみの同級生の女子が好きで、笑顔を守りたくて、いつも一生懸命な人物を演じていた。ピュアラブの青春ドラマで、みずみずしくて切ない恋をしていた。

『Gメン』ではヤンキー気質の男なので、元気いっぱいの岸が見られそうだ。しかしその後の活動は、未定となる。岸は、どんな道を選んで歩んでいくのだろう。

 岸は、炬太郎のように「たった1人でも自分を分かってくれる人がいればいい」と思う純朴さがある。だけど、岸のことを応援したいと思っているのは、今やたった1人ではない。天が、涙ながらに「ありがとう」と書き伝えていたように、岸を見ることで元気になったり、癒しをもらえたり、日々の活力にしている人がいる。だから、これからもエンターテインメントの世界にいてほしい。そして、「ありがとう」と「大好き」をたくさん伝えさせてほしい。(文・青石 爽)