■今秋以降、フジテレビドラマで起きる“変化”――
“中居氏・フジテレビ問題”が勃発する前から、フジに限らずテレビ各局ではテレビ不況のあおりを受けて番組制作費の削減が行なわれていた。
前出の制作会社関係者は言う。
「フジテレビでは、2023年秋にも多くの番組の予算がカットになり、最大で前年度より3割減になる番組まである、という話も言われましたが、“中居氏・フジ問題”でそれがさらに加速。ドラマは、同じく制作費削減が進む民放他局と比べても4分の3ほどになるといいます。ちなみに、バラエティはもっと酷いことになるそうですが……。
ただ、当然、新しくなったフジ上層部も戦略を練っている。予算がないということで一律ですべてのドラマから制作費を減らせば、全ドラマがスケールダウンすることになりますよね。それは避けたいと。今後、フジでは各ドラマの予算に“メリハリ”をつける方針だといいます。
つまり、多くの予算を確保して撮る作品と、なるべくコスパ良く済ませる作品とで、二極化するようです。勝負作を決めて臨む、ということでもあるでしょうね」
各ドラマの予算に“メリハリ”――秋ドラマで言えば、三谷氏の『もしもこの世が舞台なら~』は、まさに大きな予算を確保して作られる作品だろう。大御所である三谷作品、キャストの豪華さに加えて、前述のように近年では異例のオープンセットまで建設。明らかに“絶対に失敗できない”大予算ドラマという感じだ。
「その一方で、なるべくお金がかからないように撮られる作品もあるそうです。こうした傾向は今秋のドラマに限らず続いていくと聞こえてきています。
ただ、当然ですが“予算をかけないドラマ=最初から勝負を諦めた作品”というわけではありません。プロデューサーや監督ほかスタッフには情熱があるでしょうし、限られた予算内で名作を生み出すための努力は惜しまないはずです。それこそ、三谷さん脚本の『王様のレストラン』(95年4月期)という前例もありますからね」(前同)
三谷氏脚本、二代目松本白鸚(83)主演の『王様のレストラン』は、物語がレストラン内だけで完結していて、外ロケがほとんど行なわれなかった異色の連続ドラマ。巧みな会話劇や俳優の名演技から、現在も根強い人気を誇るフジテレビドラマの1つである。
「騒動前からフジテレビでは、予算の都合から派手なCGや大規模なロケが必要ない、セットやロケ地を限定しての“人間ドラマ”が撮られてきました。今後は、『もしもこの世が舞台なら~』のような映画級の作品と、アイデアで勝負する低予算だけど面白い作品――その二極化が進んでいくことになるのではないでしょうか」(同)
ある程度予算に制約があった方が、創意工夫を凝らして面白い作品が生み出せるということもある。映画で言えば、『カメラを止めるな!』(2018年)は予算300万円の低予算映画ながら、脚本や演出が話題を呼び、興行収入31.2億円を叩き出した。
かつては多数の大ヒットドラマを生み出してきたフジテレビ。窮地から立ち上がる同局でどんな新ドラマが作られるのか、注目だろう。