■ブランドの“使い分け”の背景とは
また、異なる名前や業態のブランドを打ち出すことによって得られるメリットは他にもある。店舗を展開する『立地』によってブランドを使い分けることで、客層を広げ、店舗数も拡大できるというのだ。
「都内に出店する外食チェーン店が郊外向けにブランド名を変えて出店した場合、ファミリーや高齢者向けの手軽なセットメニューを売り出すことで、都心と郊外で客層が変わり、元のブランドイメージを毀損することなく売り上げを伸ばせるという仕組みです」(前出の岩崎剛幸氏)
このようなブランド展開が増えた背景としては、飲食業界の飽和状態が背景にあるという。実際に帝国データバンクによると、2024年の飲食店の倒産件数は過去最多の894件。新規参入は簡単でも、廃業の多い業界でもある。
「その点、大手ブランドの参入は賃貸先のデベロッパーにも顧客にも信用が厚い。そこで、『ドトール』と『梟書茶房』など店舗名を完全に変えることで新規顧客を獲得する方法や、居酒屋チェーンの『新時代』と『新時代44』のように既存ブランドの新業態として常連に訴求したブランディングをすることで、店舗の拡大が目指せるのです」(前同)
今後はカフェや居酒屋に限らず、ファミレス業界にも『新ブランド』が誕生するのではと岩崎氏は予想した。
「既存メニューの中でも人気商品に特化した『専門店』ができるかもしれません。牛丼屋のカレー専門店など、次の展開が楽しみですね」(同)
ゼッテリアの登場は、外食チェーンが生き残るための新たな挑戦。果たして次の“進化系ブランド”はどのようなものなのか、注目が集まりそうだ。
岩崎剛幸(いわさき・たけゆき)
流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。「情がトップコンサルタントへの近道」と語る。著書多数。