日々流行の最先端やニュースを追いかけるトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が現在、注目するのは、「新入社員の意識変化」だ。

 新入社員の2人に1人以上が「成果主義よりも年功序列」を望むという調査結果が、産業能率大学総合研究所による「第36回 2025年度新入社員の会社生活調査」で明らかになりました。1989年の調査開始以来、常に成果主義志向が優位を保ってきただけに、この逆転は注目を集めています。

 調査は本年度入社の新入社員369人を対象に2025年3~4月に実施され、その結果、「年功序列を望む(望む14.6%、どちらかといえば望む41.7%)」との回答が56.3%となり、「成果主義を望む(望む6.5%、どちらかといえば望む37.1%)」の43.6%を初めて上回りました。さらに「終身雇用を望む」が69.4%、「同じ会社に長く勤めたい」が51.8%に達し、若者の安定志向が一層鮮明になってきたと言えるでしょう。

 新入社員が就職先を選ぶ際に最も重視した点は福利厚生や給与水準など待遇面が上位を占め、かつて重視されがちだった職務内容や企業風土へのこだわりは相対的に弱まる傾向が見られます。調査担当者は「新入社員には3つの特徴がある」と指摘。1つ目は東日本大震災やコロナ禍といった予測不能な出来事を経験したことによる生活設計リスクへの敏感さ、2つ目は待遇面重視へのシフト、3つ目が挑戦よりも長く続けられる安心を選択する傾向です。将来への不確実性が高まる中で、安定した基盤を求める意識が長期的な雇用や収入を保障してくれる年功序列制度への期待につながっているのではないでしょうか。

 1990年代以降に日本企業へ導入された成果主義は効率的でフェアな制度として期待されましたが、実際には短期的な成果を強く求める傾向が強まり、協働や知識共有といった目に見えにくい貢献を軽視する副作用も指摘されてきました。頑張っても正当に評価されず、将来設計も立てにくい現実を目の当たりにした若者が、予測可能で安定した年功序列に合理性を見出すのは自然な流れと考えられます。