■これまでにない朝ドラ『ばけばけ』の弱点

 演出も凝っているようで、事前番組では、当時の生活を再現したリアルなセットや、没落士族の娘を表現するヨレヨレの衣装、コーンスターチを使った空気感の演出などが紹介された。また、明治初期が舞台なのでまだ電気が通っておらず、月明かりやロウソクなど、かすかな光と影を活かした照明演出も紹介されていた。

 そんな力の入り具合に、X上では、《セット一つ一つが朝ドラじゃなくて大河みたいな作りだね。光と影のこだわり具合が本当に怪談話にあっている》、《トキの着物とか役作りとか、ちゃんと後ろにしっかりした芯がありそう》、《光と陰の淡い色調を大事にしているのが察せられる》など、多くの期待の声が寄せられていた。

 ただ、気になるのが、制作統括の橋爪氏が「これまでに見たことのない朝ドラ」とコメントしていること。高石も「何も起きない回がある」と言っているように、本作は主人公が夢を追うという朝ドラ定番のストーリーではなく、その時代の埋もれた人々に光を当てるのがテーマだが、これが保守的な傾向のある朝ドラファンに受け入れられるかどうかだ。

 また、光と影を活かした暗めの画面も気になる。朝ドラは朝の15分という、ドラマとしては特殊な時間帯だ。暗めで何も起きない今までにない朝ドラに、拒否反応が出ないだろうか。“朝から暗い”、“家事をしながら見るにはわかりにくい”といった声が上がり、“ばけばけ反省会”がいきなり盛り上がりそうな気がする。

 放送前からネガティブな条件が揃ってしまったが、それを吹き飛ばしてくれるのは俳優陣だろう。ヒロインの高石あかりが視聴者を一気に引き込めるか。吉沢をはじめとする共演陣が彼女を支え、物語を盛り上げてくれるか、注目してスタートを待ちたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。