■河合優実に中沢元紀…『あんぱん』で株を上げた俳優
中沢は、2022年に俳優デビュー。鈴木亮平(42)主演のTBS系日曜劇場『下剋上球児』(23年10月期)で半年に及ぶオーディションを勝ち抜き、生徒側の主役ポジションに抜擢されるなど、期待の若手俳優として注目されていた。
そんな中沢が『あんぱん』で演じた嵩(北村)の弟・千尋は、文武両道で兄思いの好青年。視聴者からも人気のあるキャラだったが、特に話題となったのが、劇中生前最後の登場となった6月12日放送回だ。
「その回は、登場人物が嵩役の北村さんと中沢さんの2人だけ。15分、会話劇だけで終わる異色の回でした。ここで千尋は嵩に、昔からのぶ(今田)に片思いしていたことを打ち明け、“愛する国のために死ぬより、愛する人のために生きたい”と、アツく胸中を明らかにした。その後、千尋が戦死してしまうことも含めて、多くの視聴者の胸を打ちましたよね」(前出のテレビ誌編集者)
同じく劇中で“戦死”したキャラクターでは、嵩の幼馴染・岩男役で出演した濱尾ノリタカ(25)も、戦争編で見せた強烈な演技、そして物語後半での“岩男の息子”としての再登場が話題になった。
岩男は、戦争で中国・福建省に進軍した際に、駐屯地で嵩と再会。岩男は結婚していて、まだ顔を見たことはないが、息子もいる身の上。それもあり、現地の中国人の少年・リン(渋谷そらじ/7)を可愛がり、懐かれていた。
ところが、岩男は過去にゲリラ掃討作戦でリンの親を殺していて、実はリンが岩男に近づいていたのは復讐のためだった。岩男はリンに銃で撃たれてしまうが、岩男はリンを追おうとする仲間に“リンは無関係だ”と言い張り、笑みを浮かべて息絶える――という最期が6月19日放送回で描かれた。
そして、9月16日放送回では、一児の父となった岩男の息子・和明(濱尾・一人二役)が登場。嵩から岩男の死の経緯を聞かされ、「なぜ父は、その少年をかばい続けたんですか。なぜ父は、殺されなければならなかったんですか」と食い下がるも、嵩に「それが戦争なんだよ……」と言われ、あまりの理不尽さに和明は顔をゆがませる――という、あまりにもやるせない場面があった。
「濱尾さんは、岩男を演じる際に、戦時中の飢餓状態を表現するために体重を約10キロ減量。さらに2日間水を飲まずに撮影に臨むなど、ストイックな役作りも話題になりました」(前同)
そして、『あんぱん』で一気に株を上げ、直後に放送されたドラマでの落差が話題になった俳優も――。
「中島歩さん(36)ですよね。『あんぱん』では、のぶと結婚するも、戦後に結核で亡くなった若松次郎役で6月24日放送回まで出演。落ち着きのあるダンディな紳士という感じで、死後も、のぶの人生に影響を与える人格者として大きな存在感を放っていました」(同)
のぶは教師をしていたが、戦時中に軍国主義に染まっていたことから、戦後“子どもたちに間違えた教育をしてしまった”と、自責の念に駆られていた。しかし、次郎が遺した「のぶへ。自分の目で見極め、自分の足で立ち、全力で走れ。絶望に追いつかれない速さで。それが僕の最後の夢や」という速記で書かれた遺言で立ち直り、のぶはその後、新聞社で働くことになった。
そんな次郎役の中島は、吉高由里子(37)主演の『花子とアン』(14年前期)で朝ドラレギュラー経験もあるなどキャリアのある俳優だが、『あんぱん』で注目を集めた直後の作品も話題になった。
「中島さんは、『あんぱん』から“退場”してすぐ、7月10日から放送された木村文乃さん(37)主演の夏ドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)に、木村さん演じる主人公の婚約者・川原洋司役で出演。
『あんぱん』での誠実な夫とは真逆の“クズな二股男”という役だったこと、その後の改心や、劇中での呼び名“川原なにがし”というワードの面白さなどが話題になり、『あんぱん』との相乗効果で人気が急上昇しました」(同)
《あんぱんの次郎さんの優等生さと川原なにがしの卑怯っぷり、どちらも楽しめたなぁ。 俳優さんて本当に凄いよねぇ》
《次郎さんロスが吹っ飛ぶようなキモくてズルくて嫌なヤツだった川原なにがし。最後はなんか憎めない、なんならちょっと好きだよ川原なにがし。川原なにがしロスだよ》
などと、『あんぱん』と合わせて中島を好きになった視聴者は多い。
河合、中沢、濱尾、そして中島。彼らの名演技が話題となった『あんぱん』。評価も視聴率も高かった同作は、名作朝ドラのひとつとして多くの人に記憶されていくだろう――。