■「テレビ朝日は高齢者シフト」元同局プロデューサーが解説

 9月2日に『家事ヤロウ!!!』が終了し、同月16日からは良純と孝太郎がMCを務める『日本探求アカデミックバラエティ 火曜の良純孝太郎』がスタートした。

「若年層の視聴率であるコア視聴率がなかなか取れないテレ朝にあって『家事ヤロウ!!!』はかなり健闘していたんです。にもかかわらず、同番組を終わらせて『火曜の良純孝太郎』をスタートさせ、孝太郎さんや良純さんといった二世タレントを猛プッシュ。

 育ちのいい二世タレントはシニア層から支持されますからね……。他局がコア視聴率を狙いにいくなか、テレ朝だけは独自の“シニア戦略”とも言える方針で進んでいるように見えるんです」(前出の制作会社関係者)

 テレビ朝日がここにきて小泉孝太郎を猛プッシュし、独自の戦略を取る背景を元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう解説する。

「たしかに、テレ朝は他局に比べて“高齢者シフト”を敷いているんです。コア視聴率を取りにいったほうが高い単価のCMが入ってきますから、通常は若年層の数字を取りにいくのが定石です。

 ただ、テレ朝の上層部は“シニア層でもいいから数字を取りにいけ”という方針にあるんです。結果、朝から夜までシニア層をターゲットにした番組ばかりになっているんですが、それである程度、成功をしているんです」(鎮目氏、以下同)

 テレビ朝日は1月2日、「2024年年間平均視聴率」(2024年1月1日~12月29日で、個人全体・世帯ともに3冠(全日帯・ゴールデン帯・プライム帯)を獲得したと発表した。

「視聴率を見てみるとテレ朝の成績はいいんです。ただ、売り上げ的にはそこまで……という状況にあるんです。テレ朝内でも“シニア層だけではなく若年層向けの番組を増やしたほうがいい”という声も実際にあるのですが、上層部の方針で“シニア層を含めて数字を取れ”となっているんです。

 結果、テレ朝の番組はどの曜日を見ても出ているメンツは同じ、といったことになっているんです」

 テレビ朝日の番組では『ザワつく!金曜日』を筆頭に長嶋一茂(59)、石原良純、高嶋ちさ子をよく目にする。

「加えて、小泉孝太郎さんですよね。彼らさえ出しておけばある程度の数字が取れるわけです。4人はシニア層からの好感度が抜群に高いですからね。一方で若年層からすると“何でそんなに出ているの?”といったところ。完全に若者は相手にされていない状況にあると言えそうです。

 ただ、視聴率3冠を日テレから奪取し、今の戦略はある程度上手くいっている。それでも……同じような番組・企画をやっていると飽きられたときが怖いですよね。今のテレ朝は同じようなタレントを重用し、ランキングがメインの企画ばかりが目につきますが、そういうことを続けているとある日、視聴者が突然いなくなってしまいますからね。その点を考えると恐ろしいですよ。

『家事ヤロウ!!!』を終わらせて良純さんと孝太郎さんという“いつものメンツ”の番組を始めたのも、目の前の視聴率だけを考えたらいいのでしょうが、長期的な戦略として見ると会社の経営は上向かないのではと。今の方針には“どうなの?”と疑問を呈したくもなってしまいますよね……」

 24年は視聴率3冠を獲得したテレビ朝日だが、その好調はいつまで続くのだろうか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)