相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
大相撲秋場所も中盤戦。
今場所の目玉は、関脇・若隆景の「大関取り」。今、大関は琴櫻1人だけだから、昇進ムードは盛り上がっている。今場所11勝を挙げれば、確実に昇進するだろうけど、相撲協会は10勝(3場所合計で32勝)でも上げるんじゃないかな。
ただ、問題は若隆景の相撲スタイルだ。まず、183センチ、138キロと上位陣の中では小柄なこと。しかも、ガチンコだから、ちょっとタイミングを間違えると、相手に体ごと持っていかれたりもする。「この形なら勝てる」という絶対的な「型」がないんだな。だから勝ち星が読み切れない。もう30歳だ。「ワンチャン」に賭けてほしい。
一方、「一人大関」の琴櫻は、3場所連続8勝止まりで、大関として及第点はあげられない。名古屋場所で弟弟子の琴勝峰が初優勝したとき、優勝パレードで旗手を務めたのは、実弟(幕内・琴栄峰)じゃなくて、琴櫻だったのには驚いた。
ふがいない成績の琴櫻を発奮させるため、師匠(佐渡ヶ嶽親方=元関脇・琴ノ若)が、あえて琴櫻を旗手に指名したと言われているけど、琴勝峰にとっては一生に一度かもしれない優勝なんだし、琴栄峰も新入幕だったんだから、一番喜んでくれたであろう弟と、兄弟そろってのパレードのほうがよかったんじゃないかな?
2000年春場所、オレが幕尻優勝をしたとき、パレードの旗手は、兄弟子の安芸乃島関(現・高田川親方)だった。安芸関は優勝経験がないけれど、「兄弟子を立てる」という意味で、師匠(二子山親方=元大関・貴ノ花)が決めた。