残暑も落ち着き、涼しさを感じるようになった。下がっていた食欲もグンと増してくる“食欲の秋”の到来だ。この時期にどうしても欲しくなるのが、新米に、菓子パン、ラーメンといった “炭水化物”。毎年秋になると「太っちゃう!」という心配が頭をよぎる――。

 そもそも炭水化物が“太る原因”となってしまうのはなぜか。その理由を健康検定協会・管理栄養士の望月理恵子氏が解説する。

「炭水化物は血糖値を上げる栄養素です。すぐにエネルギー源となる反面、摂りすぎた際に使われない分は脂肪として蓄えられてしまうんですよね」

 そんな炭水化物だが、素朴な疑問として浮かぶのは、ごはん、パン、麺、この3つのうち、いったいどれが一番太りやすいのかということ。

「ずばり、麺、パン、ごはんの順で太りやすいと言えますね」(望月氏=以下同)

 望月氏いわく、その理由は、なんと“噛む回数”にあるのだという。

「一般的に、すすって食べる麺類は、3つの中で噛む回数が最も少なく、満腹中枢が刺激されにくい。そのためついつい食べ過ぎてしまうし、その一方で腹もちが悪く、また食べちゃう。だから結果的に太りやすくなってしまうんです。柔らかいパンも麺に次いで噛む回数が少なくなりますから、その次に太りやすい。それに対して、お米はよく噛んで食べるので、満腹感を得やすく、一番太りにくいと言えますね」

 だが、同じごはん、パン、麺でも太りやすさに違いがあるのだとか。

「白いものは要注意ですね。麺類ならうどんやそうめんなどが代表例。これら精製された穀物を原料とした食べ物は、食物繊維やミネラルが少なくなっていて血糖値を上げやすい。つまり、太る原因と言えます。白い食パンや白米も同様です。

 さらには、インスタントラーメンや皿うどんなどは、その白い麺類を油で揚げているため脂質も加わり、より太りやすくなります。砂糖が多く使われているジャムパン、クリームパンなどの菓子パンも同じ。太るのを気にする人は控えておきたいですね」

 だが、炭水化物の誘惑は凄まじい。そうはわかっていても、無性に食べたくなってしまうもの……。そんなときはどうすればいいのか?

「茶色い物を主食に選ぶといいですね。これらには食物繊維とミネラルが豊富に含まれています。たとえば麺類なら全粒粉パスタ、パンならライ麦パンや胚芽パン、お米なら玄米、雑穀米などだと、血糖値の上昇も抑えられます」

 また、炭水化物と一緒に食物繊維やたんぱく質を摂るなどの「食べ合わせ」も、糖質の吸収を抑えることに効果的だ。

「おすすめは、食事の30分ほど前に、生野菜サラダ、トマトジュース、キウイフルーツなどの食物繊維や、プレーンヨーグルト、チーズ、魚肉ソーセージなどのたんぱく質を摂取しておくこと。主食を単品でとらないことが太りにくくするコツです」

 うどんやそうめん、ラーメンなどの、食物繊維やミネラルが少ない麺類を食べるときには、たまごやチャーシュー、わかめやもやしなどをトッピングし、先に具材から食べるようにすれば、脂肪はつきにくくなるのだそうだ。

 そして“奥の手”としては、

「低血糖やエネルギー不足になると、すぐにエネルギー源になる炭水化物が欲しくなることがありますが、そんなときは、エネルギー源になる他の栄養素、たんぱく質や脂質を摂ることで食欲を落ち着かせることもできます。特にたんぱく質は、食べると満腹感を得やすいので最適です」

 しかし、注意しておきたいのは、「炭水化物は悪ではない」ということ。そもそも炭水化物は、たんぱく質や脂質と並ぶ、体に必要な『三大栄養素』の一つ。食欲という“抑えられない感情”も、実は体が発しているサインだ。太りたくないからといって極端に制限すると、体に不調を来たしかねない。

「炭水化物を過剰にカットすると、集中力の低下、倦怠感、疲労感などにつながります。まったく摂取しないようになると、エネルギーを作り出す代謝経路が変わり、酸っぱいような体臭(ケトン臭)の原因になることも。食べ過ぎは良くありませんが、適度に摂取することが大切です」

 健康を気にするなら、食卓に一工夫を。今年は秋の味覚を罪悪感なく楽しみたい。

望月理恵子(もちづき・りえこ)
管理栄養士、健康検定協会理事長。「根拠のある情報から、栄養・健康をサポートする」ことを目的に、健康効果のある食事の提案、レシピ開発を行う株式会社Luceを運営。プライベートジム『RIZAP』立ち上げ時の栄養監修や服部栄養専門学校特別講師、山野美容芸術短期大学講師、小田原銀座クリニック栄養顧問など幅広い活動を行っている。