■今後を左右するキャストの演技
また、ほかのベテラン陣にも、《嫌な予感しかしない浮かれ具合の演技がとてもしっくりきてて、岡部たかしさんじゃないとあの感じ出せない》《池脇千鶴さん、確実に樹木希林コースを歩んでいらっしゃる。若さや表面的な美しさにしがみつかないって素敵だ》《北川景子!!大声は出さないのに静かな威圧感》などと称賛の声が寄せられた。
脚本家・ふじきみつ彦氏はWEBマガジン『本がひらく』(NHK出版)のインタビューで、《僕は「怖い人」「悪い人」「真面目な話」がうまく書けない》と明かしているが、第1週の“うさぎバブル崩壊”で松野家が多大な借金を負って没落するという、悲惨なエピソードもコミカルに描かれていた。
制作発表でふじき氏は《何も起きない物語を書いています》とコメントし、同インタビューで《苦しさを何とかしようと真面目に生きている姿が笑えたらいいなと思う》と語っている。本作はドラマチックな展開こそ少ないようだが、見ていると気持ちが温かくなる朝ドラになりそうだ。
ドラマチックさがない点では、『ばけばけ』は王道のストーリーが多い朝ドラの中では異色作と言える。また、ヒロインが夢に向かって奮闘するという、朝ドラならではの明確な本筋もないとなると、重要なのは俳優陣の演技だろう。松野家の4人をはじめ、セリフの掛け合いやキャラ設計でドラマを動かしていくのだろうが、この布陣なら心配ない。
第1週の第5回で早くも“演技おばけ”の高石あかりが登場し、ヒロイン・トキとして存在感を発揮した。さらに、大ヒットした主演映画『国宝』で、俳優としての才能をさらに開花させた吉沢亮(31)が参入し、高石とハイレベルな演技の応酬が始まることを考えると、それだけでワクワクする。
視聴率も『あんぱん』が第5週まで出せなかった、16%台を初回で出しているし、その後も15%台を堅実にキープ。この調子なら『あんぱん』超えも十分にありそうで、異色の朝ドラとして期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。