相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 大相撲秋場所は、オレの予想が珍しく当たって、横綱・豊昇龍が強さを見せた。-

 今年春場所、横綱に昇進したものの途中休場が続き、本来の相撲が影を潜めていた豊昇龍。だいぶ自信も回復してきたんじゃないかな。

 今、その対抗馬は、横綱・大の里だけど、豊昇龍が高校時代からライバル視していたのは、オレの三男・王鵬だった。日体柏高(豊昇龍)、埼玉栄高(王鵬)と学校は違えど、同学年。豊昇龍は、叔父が横綱・朝青龍、王鵬は祖父が横綱・大鵬と、ともに「横綱がルーツ」という角界サラブレッドだ。前相撲では王鵬が勝って、秋場所の対戦まで、王鵬が5勝3敗とリードしていた。

 6日目の結びの一番、豊昇龍-王鵬は、横綱対平幕というより、「同期生対決」として、期待していたのだが……。立ち合いから、王鵬の気魄がまったく伝わってこない。一方的に豊昇龍に攻められて、最後は下手投げで完敗。がっかりしたなんてもんじゃないよ。もう「ライバル」じゃなくて、水をあけられているよね。

 今場所後には、所属の大嶽部屋の師匠が変わるけど、師匠が変わったからと言って、王鵬の相撲っぷりが変わるとは思えない。人生が変わるような出来事でも起きない限り難しいだろう。覇気のない相撲で、くれぐれもファンをガッカリさせないでほしいね。

「ライバル」は同期生だけじゃない。時代を作った柏鵬や輪湖、若貴もライバル同士と言えるけど、4日目の大の里-伯桜鵬も「ライバル」対決だった。国体優勝のタイトルを取って、令和5年1月、幕下15枚目格付け出しでデビューした落合(伯桜鵬の前名)は、たった1場所で十両に昇進。「令和の怪物」と騒がれた。