阪神タイガースのレジェンド、“ナニワの春団治”こと川藤幸三が猛虎愛を語り尽くす熱血コラム。OB目線の激励から時には喝も……熱き魂が炸裂する!

 タイガースが初の日本一になったシーズンから、今年でちょうど40年や。そんな節目の年、しかも球団創設90周年の年に優勝できたんやから、こんなにめでたいことはない。

 40年前の1985年といえば、ワシもまだバリバリの現役やった。いや、バリバリというのは大ウソで、当時、すでに36歳。必死で現役にしがみついてる補欠選手やった。そんな控えの身にあっても、リーグ優勝と日本シリーズ制覇は涙が出るほど嬉しかったで。

 当時と今季のタイガースを比べると、チームカラーはまるで違う。そこに歴史というか、時代の流れのようなものを感じるな。

 ワシらの時代のタイガースといったら、個人主義者の集まりやった。野手も投手も考えるのは、自分の成績最優先や。成績が上がれば、チームの成績も上がる。そして、年俸も上がる。全員が、そう思ってた。

 ワシかて例外やない。ライバルがチャンスで凡打したのを見ると、「よっしゃ、ワシの出番や」と内心、ほくそ笑んでたからな。プロの世界で生き残るためには、それが当然だと思ってた。おそらく野武士集団といわれた昔の西鉄ライオンズの選手も、これに近い感じやったんとちゃうかな。

 そんな個人主義者の集まりに対し異を唱えたのが、江川卓とのトレードで巨人からやって来たコバ(小林繁)やった。

「カワ、タイガースには優勝できる戦力がある。個々の選手を比べても巨人と遜色ない。なのに優勝できないのはなぜか。チームが一つにまとまってないからだよ。『勝つ』という意識が、あまりにも希薄なんだ」

 巨人からやって来たコバにはタイガースの弱いところが、よく見えたんやろう。結局、コバは1983年に現役を引退し、タイガースは、その2年後に日本一になった。それまで自己主張の強かった野武士たちが、この年だけは、うまい具合に一つにまとまったんや。

 けど、翌年からは優勝から長いこと遠ざかった。つまり、個人主義者の集まりでは常勝軍団にはなれんちゅうこっちゃ。