■今のチームならば黄金時代を築ける

 ところが、今のタイガースは、まるで違う。

 主力もベンチで控える選手も、一人一人が自分の役割をちゃんと自覚し、チームの勝利のために何をしたらいいかを理解しとる。それが、走塁や進塁打や犠打にも表れとった。

 打点の成績の上位を占める佐藤、森下、大山の打力が注目されがちやけど、犠打も盗塁もリーグトップ。2年前に優勝したときは失策数はリーグ最多やったけど、今年はセ・リーグで一番少ない。小技を駆使して1点をもぎ取り、それを、きっちり守り切るだけの強力な投手陣も控えとる。

 ルーキー監督・藤川球児の、選手のコンディションを考慮した選手起用も見事やった。投手の起用では、リリーフ陣の連投を極力避けて、野手も主力を積極的に休ませた。だから、他球団のように故障による長期離脱者も出んかった。

 しかも、主力が休めば若手の出場機会は増える。二軍で頑張った選手を、どんどん起用するから、自ずとモチベーションは上がる。主力と若手の力が噛み合った今季の戦い方を見てると、タイガースは本当に強くなったと思う。確実に黄金時代を迎えつつある。

川藤幸三(かわとう・こうぞう)
1949年7月5日、福井県おおい町生まれ。1967年ドラフト9位で阪神タイガース入団(当初は投手登録)。ほどなく外野手に転向し、俊足と“勝負強さ”で頭角を現す。1976年に代打専門へ舵を切り、通算代打サヨナラ安打6本という日本記録を樹立。「代打の神様」「球界の春団治」の異名でファンに愛された。現役19年で1986年に引退後は、阪神OB会長・プロ野球解説者として年間100試合超を現場取材。豪快キャラながら若手への面倒見も良く、球界随一の“人たらし”として今も人望厚い。