■竹内涼真の絶妙すぎる演技

 初回のポイントは、やはりウザいのに勝男が憎めないところ。筑前煮を自分で作るなど、行動もそうだが、なにより、自分の時代錯誤な言動の“いびつ”さに気づいていない、真っ直ぐさが憎めなさにつながっている。これは竹内の演技によるもの。当初、勝男役にキャスティングされていたと報じられた吉沢亮(31)より良かったかもしれない。

 これで勝男がただのモラハラ男だったら、鮎美にしか共感が集まらなかっただろう。物語のテーマである、2人の成長と再生が動き出しても、視聴者は思い入れできなかったはず。その点では完璧な初回だった。

 次は勝男に代わって鮎美がメインとなる回。美容院で担当になった渚(サーヤ/29)から「好きなものは何?」と聞かれたことをきっかけに、自分の人生を生き始める過程を描き、一気に女性視聴者を引き込む流れだと思われる。初回で勝男のウザさかわいさをきっちり描いたぶん、鮎美への応援、共感の声がものすごいはずだ。

 同枠の24年7月期放送『西園寺さんは家事をしない』も、バリバリ働くが家事は絶対しない主義の独身女性・西園寺一妃(松本若菜/41)と、無愛想で無口な訳ありシングルファザー・楠見俊直(松村北斗/30)という、“いびつ”ながらも愛せるキャラだったからこそ、大きな反響を呼ぶヒットになった。本作も『西園寺さん』に続きそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。