■1984年ネタはどこまで響くか

 前半は物語の始まる下準備が続いたが、久部が新人放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介/32)に協力を求め、WS劇場で芝居をやろうと動き出すところから、ラストのフレのタップダンスまで一気に盛り上げた。菅田らメインの演技はもちろん、サブキャストも素晴らしく、これからの展開が楽しみになる回だった。

 今後は、さまざまな困難を乗り越えながら、尻上がりに盛り上がっていくのだろうが、ひとつ気になるのが、舞台になるのが小劇場ということ。作中では《小劇場ブームだからうまくいく》というセリフが何度も繰り返された。

 確かに80年代は、野田秀樹氏の「夢の遊眠社」や鴻上尚史氏の「第三舞台」などが人気となり、チケット入手が困難になるほど、小劇場ブームは起こっていた。ただ、それは芝居好きの間であって、一般にまで波及していたといはいえないし、地方によっては観に行く機会さえなかった。

 X上には、《今夜も面白く視聴。やっぱりバックステージ物って、芝居好きの血が騒ぐのよね。本当に劇中劇としてシェイクスピアやっちゃうのかしら。テレビで!?〝1984年〟〝半自叙伝〟〝小劇場〟……どの要素も万人受けはしなさそう。ま、私は私が楽しめりゃそれでいいのだ》という指摘もある。

 今後も三谷氏自身が体験した、84年ネタが作中に多く出てくるだろう。しかし、それらが視聴者に響くのかは、なんとも読みにくい。細かなこだわりは三谷氏の脚本の魅力だが、それが足を引っ張らなければいいのだが。視聴率がV字回復できるか、注目したい。(ドラマライター/ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。