■「渋さの領域にさえいた」――森七菜の演技に映画ファン沸騰

『ファーストキス 1ST KISS』は、松演じる主人公・硯カンナが、夫・駈(松村北斗)が事故死する運命を変えるべく、何度も15年前へタイムスリップを繰り返す物語。森は、カンナと共に働くしっかり者の美術スタッフ・世木杏里を好演。

「森さんの出番は少なかったですが、“過去・現在・未来は同じ時空に存在する”というSF理論を、ミルフィーユにたとえて説明する、というキャラでした。難しい理論を、説明臭さを感じさせずに話す役でしたね」(前出の映画ライター)

『フロントライン』は、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した2020年2月、災害派遣医療チームが奮闘する姿を描いた作品。森は、集団感染が発生中の豪華客船ダイヤモンド・プリンセスにて、船内で乗客たちの不安を取り除くため必死に働くクルー・羽鳥寛子を演じた。

「寛子のモデルは、元ダイヤモンド・プリンセス号フロントデスク・クルーの和田祥子さん。『フロントライン』は当時の現実を誇張することなく、淡々と描く作品のため、森さんの得意とする等身大な演技が生きていました」(前同)

『国宝』は、任侠の家に生まれながらも歌舞伎名門の当主に引き取られた男・喜久雄(吉沢)の50年を描く一代記。

 同作は10月7日時点で興行収入158億円を突破。邦画実写の興収ランキング1位の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(173.5億円)にあと15億円ほどと迫っていて、日本映画史上に残る作品になっている。

「森さんが演じたのは、大物歌舞伎役者の娘・彰子。喜久雄(吉沢)に恋をしていて、彼がとある事情で落ちぶれた際には家を捨てて地方回りを手伝います。喜久雄役の吉沢さんとは大胆な男女のシーンもあり、話題を呼びました。ただ、彼女には悲しいシーンもあり……観客からは、同情の声も多いですね。

 また、どの作品の役にも共通して言えるのは、“最初は森七菜だと分からなかった”という感想を抱く人が多いこと。そのため、森さんの俳優としての最大の強みは、良い意味で特別なオーラを感じさせないこと、と見る向きもあります。観客に”この役は森さんが演じているんだ”という先入観を抱かせないほどに、作品に溶け込んでいるということですね」(同)

 森の出演作品を巡っては、

《今年の映画賞は「国宝」総なめなのはある程度想像していますが、助演女優賞には是非とも森七菜を推したい。今年の映画、彼女なくして語れませんよ》
《本当に今年の映画作品での助演・森七菜が強すぎます》
《ファーストキスの全部が大好きなんだけど、(略)恋愛相談みたいな相談を冷やかさず答える、淡々としてるけどチャーミングな後輩の森七菜ちゃんも好きだった》
《『フロントライン』『国宝』で我らが森七菜氏が見せたリアリズム演技。あのバランス感覚をどうやって磨けたんだろうと思う。渋さの領域にさえいた》

 など、各作品での森の演技、存在感を高評価する声は多い。

「森さんは一時期、事務所移籍・独立を巡るトラブルが報じられて仕事が減ったこともありましたが、それも過去の話。いよいよ本格的に俳優としての才能が開花したとも言えそうです」(同)

 森は2016年に芸能界デビューしたが、『この恋あたためますか』(TBS系/20年10月期)で連続ドラマ初主演を果たすなど本格的に売れ始めた21年1月(当時19歳)、インスタグラムのアカウントや所属事務所の公式サイトからプロフィールが唐突に削除。

 同月末には大手芸能事務所『ソニー・ミュージックアーティスツ』にエージェント業務提携で個人契約を結んだことが発表されたが、移籍までの経緯から“何かトラブルがあったのでは”とざわつかせた。

「ですが、森さんはその後、国内外で高い評価を受ける是枝裕和監督(63)のNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』(23年1月配信)の主演に抜擢されるなど、演技力が評価され、活躍。今年に限らず多くの映画に起用されていますし、出演作での評判は良いですよね。今回、インスタグラムで話題となっている金髪姿も“役作りでは”といった声が寄せられています」(同)

 今年、森は“助演俳優”として大きく株を上げたと言えそうだが、来春には、東京・新宿歌舞伎町が舞台の主演映画『炎上』が控えている。2026年はいよいよ、“俳優・森七菜”が話題を独占する年になるのかも――。