■『ザ・ロイヤルファミリー』を見るには競馬知識が必要か
北海道の景色や競走馬の姿が美しく、俳優と制作陣の力が入った素晴らしい出来だった。現役騎手がゲスト出演するなど、さすがはJRAの全面協力で、X上では《過去のレース映像が使われていてそこに出ていた馬各位もスタッフロールに出てきて。不慮の事故で亡くなった応援していた子が出てきたので泣きました》など、競馬ファンからは称賛の声が。
とはいえ、税理士一筋だった父が突然亡くなり、希望を見いだせなくなった税理士・栗須、赤字続きで競馬事業部撤廃の危機が迫っている社長・山王という、同じ追い詰められた者同士が奇跡を起こしていくという筋立ては、ドラマとしてはありきたりだ。妻夫木、佐藤らの演技は確かに良かったが、それだけでずっと視聴者を引っ張れるものでもない。
このドラマは、そんな栗須と山王の関係に競走馬が絡んできて、壮大なストーリーが浮かび上がってくるのだろう。別の言い方をすれば、競馬があってこその面白さだ。そうなると、競馬ファンならいざ知らず、競馬のことを知らない一般視聴者がついてこられるかどうかは正直、未知数。初回の視聴率の数字が今ひとつだったのも、とっつきにくさを感じた人が少なくなかったからではないだろうか。
もちろん、盤石なキャストに加え、原作は多くの小説がドラマ化されている早見和真氏、演出は同局の『アンナチュラル』や『最愛』の塚原あゆ子氏なので、競馬を知らない人も楽しめるように作られているのは間違いない。競馬ファンも競馬ファン以外も興奮できる、壮大なストーリーに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。