日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。多くの人の胸に学生時代の思い出として残る修学旅行。そんな恒例行事が現在、岐路に立たされているという。
中学生の修学旅行費が過去最高水準に達しています。日本修学旅行協会の調査では、2023年度の平均費用が1人あたり7万円を超過。コロナ禍前の19年度は約6万4600円であり、わずか数年で6000円以上の増加となりました。宿泊費や交通費の高騰が主な要因とされ、さらに京都や奈良といった定番の行き先では宿泊施設や貸切バスの確保が難しくなるなど、「物価高」と「オーバーツーリズム」という二重の課題が同時に浮き彫りになっています。
不動産データ分析大手・米コスター・グループ傘下のSTRによれば、25年2月の国内ホテルの平均客室単価は2万723円。観光客向けホテルの平均客室単価が2月としては初めて2万円を突破した。ビジネス出張でも宿泊先の手配に苦労する状況が広がる中、修学旅行も費用上昇を避けられず、学校は行き先や日程の見直しを迫られています。
修学旅行費用の内訳を見ると、交通費が4割ほど、宿泊費が3割ほどを占め、両者で全体の4分の3にあたるといいます。体験活動費は1割に満たず、旅行先での学びや体験よりも移動と宿泊に多くの予算が割かれている構図です。さらに、旅行中の安全を守るために同行する看護師や保険料なども必須経費であり、学校が自由に削減できる部分は限定的。教育効果を重視しつつ、限られた予算をどう使うかという難しい判断が各校には求められています。
こうした状況を受け、全国では費用削減の工夫が進んでいるようです。貸切バスに添乗するガイドを外す、食事代や一部の交通費を家庭負担とする、宿泊日数を減らすといった取り組みが一般化。青森県八戸市では小中学校の修学旅行を1泊減らす試みを実施しましたが、現場からは「学びの機会だけでなく思い出まで削られてしまうのは寂しい」との声があがったそうです。班別や自由行動を増やし、個々の負担に切り替えるという案もあるようですが、家庭ごとの経済状況によって不公平感が生じる恐れもあり、難しい選択となりそうです。