■コロナ禍を経て増加した貸切バスの利用と近場の修学旅行

 一方で、京都市内では市バスの混雑が深刻化し、修学旅行生が予定通り移動できないケースが続出。国内外からの観光客が集中し、宿泊先や貸切バスの予約が従来より格段に難しくなっているのが理由です。そのため、都内の中学校では京都や奈良に代わり、石川県や四国など新たな行き先を選ぶ例が出ているといいます。

 また、茨城県水戸市では、修学旅行費が5年間で約9000円上昇したことを受け、市内32校の保護者を対象にアンケートを実施。その結果、東北や北陸など比較的費用を抑えやすい地域を候補に追加する方針を固めました。さらに、兵庫県尼崎市のように「うちに来てほしい」と積極的に誘致に動く自治体も登場。工場見学やワークショップを整備し、ものづくりの体験を提供するなど、各地域が特色を打ち出して受け入れ態勢を強化しています。

 修学旅行の在り方は、コロナ禍を経て大きく変わりました。感染対策として貸切バスの利用が増加し、関東では比較的近場である山梨や長野といった目的地が選ばれるケースも増加。探究的な学習が重視される教育現場の流れを受け、農山漁村での民泊や地域の職人から直接学ぶ活動など「ホンモノ体験」への関心も高まっています。

 ネット上でも修学旅行に関する議論が広がっており、《昔から高かったが、さらに値上がりしていたのか》《旅費だけでなく、お小遣いの額も上がっており、自由行動での食事代も自己負担だから今の子は大変》《修学旅行も全員参加ではなく任意にすべき。お金の問題だけでなく行きたくない人もいるはず》《いつまで昭和の悪習を続けているのか、教師の負担も重いので、早くやめるべき》といった声が寄せられています。

「修学旅行は学校教育における特別活動の一環であり、旅行業界にとっても閑散期を支える重要な需要です。地域経済の活性化にも寄与してきた歴史があり、その存続は多方面に影響を及ぼします。今後は、学校・家庭・地域社会が協力し、教育的価値を失わずに続けられる形をどう作るかが焦点となるでしょう」(全国紙社会部記者)

 旅行内容の多様化が一層進み、地域や学校の選択によって修学旅行の姿が大きく変化していきそうです。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。