■『ニュースナック』人気の理由は明朗会計

 若者の間で、近年人気が沸騰しているという『スナック』だが、昭和の雰囲気漂うスナックとはガラリと様変わり。『ニュースナック』と呼ばれる形態は店内も洗練された雰囲気だという。

「ママも20~30代と若かったり、スタッフも日中はフリーランスやサラリーマンをしている人が、週1でカウンターに立つなどカジュアルな雰囲気。また、店内もスタッフがTシャツ姿で対応し、カラオケはないことも。禁煙の店も多く、若い世代が過ごしやすい様子です」(前出の谷口功一氏)

 スナックと言えば、常連以外は入りにくい雰囲気で会計が最後までわからないという難点もあった。

「ニュースナックは、インスタグラムを通して店内の雰囲気や価格帯を明確にしていることがほとんど。一見さんでも抵抗なく入店できるシステムとなっています」(前同)

 では、なぜ店長であるママやスタッフにも若年層が増えているのか。谷口氏が続ける。

「これは、スナックを開業することのハードルの低さにあるでしょう。200~300万の資金で開店ができるので、クラウドファンディングもしやすい。若者の起業としても比較的容易にできるのです」

 とはいえ、『スナック』を名乗るだけあって“酒を提供するだけの場”ではない。社交場としても充分機能している点は、昭和の頃から変わりはないようだ。

「来るお客さんはみんな話したい人ばかり。そんな彼らをスタッフやママが共通点を見つけてつなげたり、反対に込み入った話をしている集団には立ち入らせないようにしています。この気遣いがスナックならではの魅力ではないでしょうか」(前同)

 最後に谷口氏が令和のスナックの在り方について語った。

「スナックは常連も大切にすることから“場の空気”を重んじます。例え昭和のスナックに入り込んでしまったとしても、気遣いをきちんとするなら良いお客さんです。今後の社会情勢が変わっても、このようなつながりを作る場所は穏やかに増えていくでしょう。一度気になっているお店に行ってみてはいかがでしょうか」

 SNSの台頭で希薄になった他者との繋がり。一度、スナックを訪れて人の温かさを感じてみるのも良いかもしれない。

谷口功一(たにぐち・こういち)
1973年、大分県別府市生まれ。東京都立大学法学部教授。スナック研究会代表。著著に『日本の夜の公共圏~スナック研究序説』(白水社)、『日本の水商売~法哲学者、夜のまちを歩く』(PHP研究所)など。