■実は野心作な『終幕のロンド』

 感動的な初回だったが、気になるのは遺品整理をテーマにした泣けるドラマかと思いきや、真琴と夫・利人、その母・富美子(小柳ルミ子/73)、父・剛太郎(村上弘明/68)ら御厨家のドロドロした人間模様が描かれたこと。劇伴までも変わり、2つのパートが同居していることに少し違和感を覚えた。

 その点を懸念してかX上には、《遺品整理の話と御厨家の話の空気感がなんだか違いすぎて二つのドラマを観たような気分だった。いろんな要素がごっちゃになって今後とっちらからないといいな》《じんわり泣けるのかと思ったら日曜劇場でも木曜劇場でも月9でもあるのか。どう見ればいいんだこれは笑》などの声があった。

 うまくまとめられればいいが、指摘のように本作にはとっ散らかってしまう危険性もある。だが、草なぎは公式のインタビューで「新しい分野、新しい世界観」「スロースタートのはずだったのに、回を追うごとに、ドキドキハラハラ」と言っているので、2つのパートが絡まりながら展開することになるのだろう。

 バランスを間違えれば収拾がつかなくなるが、成功すれば傑作になるはず。脚本は草なぎ主演で高い評価を受けた単発ドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(NHK)の高橋美幸氏、演出は草なぎ主演の「戦争シリーズ」(フジテレビ系)の三宅喜重氏と、手慣れたスタッフだけにその可能性は高い。テーマが地味なため、注目度は高くないが、今期一番のダークホースになるかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。