■竹内涼真・夏帆の演技がすごい!
夕食を鮎美(夏帆)が作り置きしてくれたのに、レンジで温めると味が落ちるとダメ出ししたり、後輩・南川(杏花)の食の好みを全否定するなど、勝男(竹内)の言うことやることは明らかにモラハラまみれ。しかし、反省したり気づいたりが素直すぎて、逆に応援したくなってしまう。それは、コミカルさとシリアスさの演技バランスが絶妙すぎる、竹内マジックによるところが大きい。
一方の鮎美は、「鮎メロ頑張れ」など共感の声があふれる回になると思いきや、そんなに単純ではなかった。X上では、《鮎美の周りには距離感バグってる人間が集まってくる。依存したい人のところには依存されたい人がくる》《ミナトくんまじで距離感バカすぎて危ない予感しかしない》などと、鮎美を心配する声も。
今回、鮎美が自分を見失うまで自我を押し殺してきたのは、相手に依存するためだったということが見えてきた。そして、そんな鮎美の胸の内まで表現する、夏帆が素晴らしかった。幸せそうなのに、常に相手をうかがう雰囲気を出していて、不幸がチラチラ見えてくる演技はすごい。
ひたすらまっすぐな勝男を演じる竹内と、迷い続ける鮎美を演じる夏帆。谷口菜津子氏の原作の世界観をもとにした、安藤奎氏の脚本、伊東祥宏氏らの演出、金子隆博氏の劇伴も素晴らしいが、2人の演技が、さらに物語に奥深さを与えている。
いわゆる男女の再生ものだが、ここまで見る限り、ただのモラハラ男、抑圧された女の話で終わらず、これまでのドラマでは描かれてこなかった、心の奥底が描かれそうだ。そうなれば、本作は火曜ドラマどころか、近年のTBS最大のヒットになる可能性は高い。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。