日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が現代のトレンドを徹底解説。今回は、令和世代には信じられない昭和のトンデモ常識を深掘りする。
昭和の時代には、今の常識では考えられないような出来事や習慣が、当たり前のように存在していました。街の風景も人々の価値観もどこか牧歌的で、それでいて少し無頓着。
そこには、便利さや安全よりも「人のつながり」や「その場の空気」を大切にする、独特の時代の色がありました。ここでは、当時の暮らしぶりを象徴する“昭和の常識”を振り返ってみましょう。
まず驚くのは、子どもでもタバコが買えたという話です。角のたばこ屋で「お父さんの分です」と言えば、店主は何の疑いもなく箱を渡しました。やがて街角にタバコの自動販売機がずらりと並ぶようになると、夜でも誰でも買えてしまう時代に。年齢確認もなければカメラもない。子どもたちは興味半分で百円玉を重ね、「買えた!」と得意げに笑い合ったといいます。今から思えば危うい光景ですが、それほどまでに社会全体が“おおらか”だったのではないでしょうか。
そんな「信頼」の文化は、家庭の外にも広がっていました。不在時に届いた荷物を隣の家が預かってくれるのが当たり前だったのです。
配達員が「お隣にお願いしておきました」と言えば、それで問題なし。お礼にお菓子を渡したり、後日おすそ分けで返したりと、互いに顔が見える関係が自然に成立していました。便利な再配達システムがなかったぶん、人の温かさが宅配の仕組みを支えていたのです。
学校の空気も今とは違いました。授業中に騒げばゲンコツ、遅刻すればビンタ。チョークが飛んでくるのも珍しくなく、廊下に立たされるのは日常の風景。教師が絶対的な存在で、保護者に告げても「あなたが悪い」で終わるのが普通でした。
中には授業中にたばこを吸う先生もいて、教室が煙でかすむほどだったという証言もあります。今なら体罰やハラスメントとして問題視される行為が、当時は「教育の一環」として受け入れられていたのです。