■『踊る大捜査線』はファンとともに作り上げる作品

 拡散されたXの投稿のなかには1000万以上表示されたものもあり、反響のなかには、《新しい広告手法なのか》《宣伝費を使わない大規模PR》など、宣伝効果を狙ったものなのではと勘ぐる声もあったが――前出の映画制作会社関係者が、『踊る―』が大事にしてきた"戦略”を明かす。

「当初から劇場版『踊る―』はファンと一緒に作るという意識がありました。1998年公開の劇場版第1作を盛り上げるため、1997年末に作られた公式サイトには『ネットワーク特別捜査本部』という掲示板がありました。そこではファン同士が熱いトークを繰り広げたり、スタッフとコミュニケーションを取ったりしていたんですよね。ロケ地見学やオフ会なども活発で、2003年まで運用されました。

 その後、2024年になってトークアプリ・Discordにて『ネットワーク特別捜査本部』が復活しました。そこではファン同士の交流はもちろん、スタッフにより、撮影の裏側を見せるメイキングや“撮影日記”が投稿されるほか、エキストラ募集の情報も。日々進行する制作状況を追うことができますし、“捜査員”たち同士の情報交換などで絆も深まっていく。『踊る―』の制作に、ファンの存在は不可欠なんです」

 10月27日の撮影についても、『ネットワーク特別捜査本部』の公式Xでは

《エキストラ参加された捜査員の皆様、お疲れ様でした 現場を身近に感じられるのも、ネットワーク特別捜査本部ならでは 引き続き、"応援捜査"をよろしくお願いいたします》

 とねぎらいの投稿がされている。

 今回、ライブカメラがネットで拡散されたことに関しては、「エキストラを交えた撮影がライブカメラで“生中継”されることまで、制作陣が考えていたかどうかまでは定かでない」(前出の映画制作会社関係者)というが、ネットを活用した宣伝戦略は、1作目のときからの制作陣の戦略だった。

 もともと連続ドラマとして、1997年1月クールで放送された『踊る―』。2003年7月公開の劇場版第2作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』は興行収入173.5億円を記録し、現在に至るまで日本における実写映画の歴代興行収入第1位というヒット作だ(10月29日時点)。ただし今年は6月に封切りされた映画『国宝』が興収162億円を超え(同)、『踊る―』に迫っている。前出の映画制作会社関係者はこう語る。

「『踊る―』のスタッフ陣は『国宝』の興行収入を当然、意識しているでしょう。もし、仮に抜かれたとしても今作を絶対にヒットさせるという気概があるはず」

 青島は邦画実写1位の座を守れるだろうか――。