連日、全国紙やワイドショーを騒がせるクマによる人的被害。日本列島を恐怖に陥れている猛獣は大都市圏にも姿を見せているという。
東京都環境局の担当者が言う。
「今年に入って、都内でクマが目撃された件数は241件です。クマが出没するのは西多摩地域で、奥多摩町、檜原村、あきる野市、日出町、青梅市、八王子市となります」
ツキノワグマを研究する東京農工大学教授の小池伸介氏が言う。
「愛知県や大阪府がホームページ上で公表しているクマの出没情報を見ても、森や川沿いの地帯にクマは出現している。
大都市圏でも、これらの地域にはクマが現れる可能性があるでしょう」
恐ろしいことに“クマ絶滅の地”とされてきた九州にも、その危機は迫っているという。本州と九州を結ぶ関門海峡は最狭部で約650メートル。クマなら十分に泳げる距離だというのだ。
北九州市の産業経済局農林水産部鳥獣被害対策課の担当者が話す。
「下関市のクマの目撃や出没情報の収集は怠っていません。市民向けにもクマに出合ったときの対処法などを、市のホームページ上に掲載しております」
九州では1957年にツキノワグマの死骸が発見されたのを最後に、その姿は目撃されていない。“クマ再上陸”となれば、地域社会が大混乱に陥ることは想像に難くない。
前出の環境省の担当者が話す。
「冬を越すためにも、今の季節にクマは脂肪を蓄える必要がある。エサを求めて人里へと出現する可能性が最も高いんです」
今後、冬眠シーズンに入っても一安心とは限らない。前出の小池氏が話す。
「近年は“冬眠しないクマ”の存在が報告されています。厳冬期でもエサさえ十分に確保できれば、冬眠しないですみますから。それにクマは冬眠中であっても、穴を変えることがあるんです。冬になったからクマとの遭遇がゼロになるというわけではないんです」