■天才としか思えない白鳥玉季の演技

 まさしく、白鳥の演技は天才的だった。ほたるがカフェで索(手越)とダムカレーを食べながら、父と母への想いを吐き出したときの涙から、帰りの車中でお菓子をほおばる無邪気さまでの振り幅は、えげつないほどだった。主人公は玄一(及川)だが、ドラマの中心がほたるになってしまう、白鳥のものすごい求心力。これで15歳というのが信じられない。

 また《かなりディープなテーマを描いているけど登場人物の台詞がとても優しくて温かい気持ちになるね…今回の「なくなったってことはあったってこと」がとても好き…》《奇想天外な話なのに、なんだか皆魅力的で惹きつけられる不思議。言葉のチョイスも面白いし、新人の脚本家さん天才なのでは?》など、脚本への称賛の声も多かった。

 指摘にもあったセリフ「なくなったってことはあったこと」を全体のテーマにして、それを物語の中に散りばめ、染み渡らせていく、新人脚本家とは思えない素晴らしい構成力。日テレシナリオライターコンテストで2023年度審査員特別賞を受賞した松本優紀氏は、これからの日テレドラマを背負っていきそうだ。

 もちろん、及川と手越の演技も素晴らしく、白鳥とのシーンはもちろん、光石研や坂井真紀(55)らクセの強い俳優との絡みも見応えがある。これに、現在は全国を逃亡中の麻生久美子演じるほたるの母・ともえが帰ってきて、本格参戦するとなると、どんな演技合戦を見せてくれるのか、楽しみでしかない。

 物語はまだ中盤。次回は、ともえ(麻生)の横領事件の真相がついに明らかになるようだし、玄一の初恋相手と思われる鯉登(大谷亮平/45)や、索と元恋人・吉田(井之脇海/29)にも動きがありそうで、どんな展開になるのか、目が離せない。配信の数字こそ低調だが、本作は今期イチ見ないともったいないドラマだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。