■大好評だった「熊串焼」しかし駆除への活用は…
「我々は村に残るマタギ文化の継承や観光の活性化を目的に、『白神ジビエ』というブランド名で熊肉のジビエ料理を扱っております。ブランドPRのために、津軽地区の道の駅や県内外のイベントで熊鍋や熊串を出店販売しておりまして、X投稿の『熊串焼』は10月25・26日に、青森県横浜町にある『道の駅よこはま』で開催された『青森県道の駅フェア』で販売したものです。
初めての場所での出店でしたが、熊肉に好意的なお客様が多く、たくさんご購入頂けました。普段のイベントより3倍準備して臨みましたが、2日目の午前には売り切れました。その中のお客様に、今回の投稿者の方がいらしていた状況です。大きな話題になったようで、投稿者さまには大変感謝しております」(一般財団法人・ブナの里白神公社 角田克彦氏、以下同)
クマをはじめとしたジビエ料理はクセが強いと言われるが、調理ではこの点を意識しているという。
「『白神ジビエ』は、コンセプトとして“ジビエ入門編”と位置付けております。多くの方に召し上がって頂きたく、臭みの少ない食べやすい味付け・下処理を心掛けています。熊肉は臭い・固いイメージが浸透しており、それをどうにか払拭してジビエに興味を持って頂き、観光の活性化につなげていきたい思いです」
これだけ好評なら、クマ料理の普及と、それに伴うクマの個体数削減、ひいては被害の減少も見えそうだ。角田氏もクマ被害のニュースには胸を痛めているそうで、利害は一致するように思えるが、そう単純ではないと“マタギ精神”から本音を語る。
「これは非常に難しい問題です。クマ被害は全国各地で相次ぎ、亡くなる人もいて心が痛みますし、西目屋村でも役場内に子グマが入り込んで全国ニュースになりました。しかし、乱獲すれば生態系を乱すことにも繋がり、“山との共存”というマタギ文化の精神に反するようにも感じてしまって……。
かつて、村で駆除したクマはすべて廃棄していたのですが、マタギ文化では“クマは山からの授かりもの”と大切に扱われていたんですよ。“廃棄はもったいない”“何かに活かせないか”、そんな思いから始まったのが、マタギ文化の継承・ツキノワグマの活用・観光の活性化を目的とした『白神ジビエ』でした。
使うツキノワグマも、あくまでも食用に狩るのではなく、村産業課のNAP(西目屋アニマルパトロール隊)が村民の依頼で設置した罠にかかったクマを利用しています。本当は今まで通りに自然に任せて共存できればいいのですが、人と熊の境界線が曖昧になる中、一筋縄ではいきません」
クマ被害の減少を“食べて促進”させるには、いろいろと複雑な事情があるようだ。