阪神タイガースのレジェンド、“ナニワの春団治”こと川藤幸三が猛虎愛を語り尽くす熱血コラム。OB目線の激励から時には喝も……熱き魂が炸裂する!

 超一流の打者になると、その打者にしか醸し出せない独特の雰囲気がある。

 いわゆるオーラっちゅうのかな。ピッチャーからすれば、今にも打たれそうな威圧感や迫力に感じられるし、自軍の選手やファンにしてみれば、大事な場面では必ず打ってくれそうな頼り甲斐や風格に感じられる。

 まあ、ある種の色気みたいなもんや。

 ワシらの時代、映画館のスクリーンに高倉健さんや鶴田浩二さんが現れると、それだけでワクワクしたけど、そんなオーラは超一流の野球選手にもある。王さん、長嶋さんがそうだったし、ワシがタイガースで間近に見てきた中では、やっぱり掛布雅之やろう。

 カケのフォームは独特やった。背中を丸めるように小さく構え、すべての力を体にため込んでるように見える。右肩を微妙に開いて、ピッチャーに正対した姿にはスキがない。全盛期は、どんなボールも打ちそうな雰囲気が漂ってた。

 もちろん、結果も残した。ホームラン王3回、打点王1回。特筆すべきは最高出塁率のタイトルを3度獲ったことやろう。とにかく選球眼が良く、通算の出塁率は3割8分を超える。

 カケは記憶に残る一発も多い。優勝決定試合や日本シリーズでの一発もあるし、オールスターでの3打席連続ホームランもある。