1980年代、日本では“校内暴力”が社会問題になり、不良やヤンキーをテーマにしたドラマ・漫画も数多く人気を博した。あの当時と比べると令和の学校現場は平和だと感じる大人も多いかもしれないが、実際のところ、校内暴力の件数は過去最悪を記録している。

 このデータが世に出たのは10月29日。文部科学省はこの日、毎年行っている「児童生徒の問題行動・不登校等に関する調査」の結果を報告した。

 調査結果によると、全国の小中高校で2024年度に確認された児童・生徒による暴力行為は、過去最多の12万8859件。これは前年度比約2万件増で、実に4年連続の増加だった。

 内訳は小学校が前年度より約1万3000件増の8万2997件、中学校が同6400件増の4万39件、高校が同460件増の5823件。いずれも前年より増えているが、特に小学校で急増していることが浮き彫りになっている。

 校内暴力が社会問題だった80年代、子どもの数は今よりもはるかに多かったが、現在の日本は少子化と言われて久しい。子どもが少ないのに対して“過去最多”であれば、割合としてはより深刻なことになる。

 一体なぜここまで深刻化しているのか──。追手門学院大学客員教授で教育ジャーナリストの西田浩史氏は、大きく3つの要因があるとした。

 まず1つ目は“景気”で、これは小学生の暴力が増えている要因でもあると分析する。

「校内暴力というのは“増える時期”があって、景気が上下する変わり目に多くなります。今は好景気とされていますが大企業中心ですし、日経平均が上がる企業もあれば下がる企業もある。経済的な状況の変化で親同士がいさかいを起こしやすく、それが子どものストレスにも繋がって、発散として暴力に走るケースが多いんです。

 貧富の差で子どもも二極化していて、豊かな家庭は子を塾へ行かせ、中学受験をし、トップ校に通わせる。そういう子どもは学校から帰っても遊ばずに塾へ行き、夜まで勉強して翌朝また登校というライフサイクルですから、ストレスが溜まって“学校で発散してやろう”となるんです」(西田氏)