■SNSが現実世界での暴力行為にも影響? 実際はさらに多いと“調査の穴”も推測

 2つ目に挙げたのは“可視化”のしづらさだ。昔のような目に見える不良が減ったことで、暴力をふるう子どもを発見・対策しづらくなったという。

「不良同士がケンカをするような昔と違い、今は強いものが弱いものに暴力をふるうケースが増えています。先生としても、髪を染めたり制服を改造するような子どももいないので、暴力をふるいそうな子どもに目をつけることが難しい。暴力を未然に防ぐことができず、発生してから気付いたり、気付いた時には何件も事案があったということが起こるんです」(前出の西田氏、以下同)

 3つ目に挙げたのは、いじめでもよく使われるSNSだ。デジタルは現実にも影響しているそうで、特に地方ではより顕著だという。

「SNSも影響しているでしょう。昔は放課後や学校外だと、暴力事案も見つけにくい環境にありました。今は集団で暴行するような動画が出回り、それが報告され、学校側が学校外での事案を認識することもあります。校内でいっても、SNSは場所や時間に関係なくやりとりができるため、それがトラブルの種になって暴力にエスカレートすることもあるでしょう。

 特に地方の子どもは、車社会で親に頼まないと大した外出ができないなど、娯楽の少なさからSNSに没頭しがちです。また、地方特有のコミュニティの狭さも、摩擦が起きやすい要因といえます」

 また、西田氏によると、ただでさえ過去最多とされる校内暴力の実際の件数は、さらに多いのではないかという……。

「今回の調査は格差が激しいので、ちゃんとデータを取れているところと取れていないところがあるのではないかと感じています。人間、評価に関わることは隠蔽しがちですし、調査対象の学校・教育委員会は文科省には逆らえないので、ちゃんと申告をするところと、イメージ悪化を恐れて申告をしないところがあったのでは。調査を行うのは、フラットな第三者機関のほうがいいかもしれません」

 年々、子どもが減っていく中で、少しでも良い教育環境を作るのが大人の役目だ。

西田浩史 (にしだ・ひろふみ)
追手門学院大学客員教授、ルートマップマガジン社 取締役・編集長、教育ジャーナリスト。2016年ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者、塾業界誌記者を経て、19年追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員、20年から現職。全国5,000にも及ぶ塾の関係者(計20,000人)を取材。著書に『大学序列』『医学部&医者』『関関同立』『中高一貫vs地方名門 最強の高校』(いずれも週刊ダイヤモンド特集BOOKS ダイヤモンド社)など。