■すでに史実より美化して描かれている三之丞だが…

 家が没落する前、三之丞(板垣)は“今まで親に相手にされてこなかったのに、兄が失踪したせいでいきなり工場の社長をやることになってしまった悲劇の青年”という感じだったが、史実では“勉強嫌いで学校をサボり続け、工場が大変な時期にも趣味の小鳥の飼育しかせず、父に鞭で滅多打ちにされる”という問題児だった。

 そして、家の没落後も三之丞のモデルである藤三郎は、セツがハーンと結婚後に母・チエのために送った仕送りに依存したり、金に困った末に家族に黙って先祖代々の墓石まで売り払ってしまうなど、まともに働こうとしない人物だったという記録が残っている。

 また、1900年夏頃、八雲・セツの一家が東京に移住後、藤三郎が東京に現れて無期限でその家に置いてもらい、良い就職口を斡旋してもらおうと20日ほど滞在した、という記録もある。

 八雲の長男・一雄氏によるエッセイ『父小泉八雲』(小山書店)によると、そこで八雲に先祖の墓を売ったことを強く責められたといい、八雲に悪態をつく藤三郎にセツも堪忍袋の緒が切れて、「あんたは本家らしい事を一度でもして見せましたかッ? 先祖の墓石まで食べて、それで何が立派な本家の旦那ですッ!」」と叱りつけたという。藤三郎はこの日、小泉家を飛び出したのを最後に、2度と夫婦の前に姿を見せなかったという。

 それから16年後の1916年、藤三郎は、本籍を置いている住所の近くの空き家で、現代でいう“孤独死”している姿が発見されたという。

 すでに『ばけばけ』でも、三之丞がこの先で何か大きな失敗をしでかすのでは、と感じさせる描写がある。11月10日放送回では、タエ(北川)と三之丞の貧窮ぶりに心を痛めたトキ(高石)が、三之丞に当時は大金の10円を差し出した。“傳(堤)が、もしもの時にタエに渡すように託していたお金”と嘘をついて身銭を切り、「このお金で、家を借りて暮らしてごしなさい」と渡した。

 ところが、亡き父からの金と解釈したからか、三之丞はトキに礼を言わず、頭も下げずにその場を去る。しかも、破れ寺に帰宅後、タエに金をもらったことを伝えないばかりか、後ろ手に隠したのだ。

《何でタエ様が帰ってきた時に金を懐に隠すんだ三之丞坊ちゃん…ちゃんとそのお金を建設的に使ってくれよ?》
《三之丞ちゃんと家を借りたり食べる物を買うか心配… 自分で商売しようとして貰った金溶かしそうで怖い》
《三之丞さん心配だなーって思いつつ過ごしてますが更にモデルになった方の史実を読んでしまい更に心配に》
《笑いを交えて軽いノリでやってるみたいだけど結構容赦無い展開だよね。雨清水三之丞のモデルの小泉藤三郎は家督面目と現実の板挟みになって45歳で孤独死したそうで、ドラマではどうするのかな、全然笑えない話なんだけど》
《三之丞は史実だととんでもない厄介者なのだがドラマでは変えてくるかどうか。まああのお金が正しく使われることはないだろう……》

 といった、今後ろくなことにならないだろうと察する声が多く寄せられている。

「『ばけばけ』は、主演の高石さんの表情や言い回しのうまさ、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹によるユルいナレーションなどでなるべく雰囲気を明るくしようという感じが伝わってきますが、すでにタエの物乞い姿などは多くの視聴者にショックを与えていて……。朝に放送するドラマだけに史実よりはマイルドになるのでしょうが、三之丞の行く末を中心に壮絶な内容の朝ドラとなりそうですね」(前出の女性誌編集者)

 板垣演じる三之丞は、史実と同様の悲惨な末路を迎えてしまうのだろうか……。