日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。昭和の習い事の定番が、今、再び注目を集めているようで……。

 昭和の時代、子どもの習い事の定番だった「そろばん」が、令和になって再び注目を集めています。かつては電卓の普及や習い事の多様化で生徒数が減少しましたが、「小学生白書」の習い事ランキングではトップが水泳、2位が学習塾、3位が英会話教室で、6位のそろばんはサッカー(8位)や野球(13位)よりも上になるなど人気の復活が確認されます。

 都内のそろばん教室では、開校当初より生徒数が倍増し、全国規模でも新規入塾者が増加したといいます。子どもたちからは「計算して頭を使うのが楽しい」「暗算が早くなるので便利」といった声も。楽しみながら能力を伸ばせる学習法として評価されています。

 そろばん人気の背景にあるのが「中学受験」。算数が入試で大きな比重を占める学校では、計算力を身につけることが入試対策として重要視され、そろばんは有効な手段とされています。保護者の半数以上が中学受験を意識して子どもに習わせていることも、全国珠算教育連盟の調査で明らかになっています。

 加えて、そろばんは子どもだけでなく大人も注目。指先を使い計算を行うことで脳を刺激し、集中力や情報処理能力の向上につながるため、中高年の脳トレやリフレッシュとして取り入れる人が増えているとのこと。日常生活での暗算力の向上も期待でき、実生活で役立つスキルとして評価されている点も魅力です。

 ブームを後押ししているのは、オンラインそろばん教室の普及。コロナ禍をきっかけに導入されたオンライン授業では、通学が難しい地域からでも受講可能となり、従来の対面授業と同等の学習効果が得られる環境が整いました。1コマで数十人規模の生徒が参加できる教室もあり、実際、アメリカなど海外から受講する人もいるようです。