日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回は、熾烈な市場競争が繰り広げられるランニングシューズに注目した。

 ランニング市場は世界的に拡大の一途。各メーカーが技術力を駆使したシューズ開発を進める現在は、まさに「シューズ戦国時代」の様相を呈しています。

 その中でアシックスは好調を維持しており、2025年12月期には売上高8000億円を達成。5年前の約2.4倍の成長を見せています。コロナ禍で2020年12月期には営業赤字に転落しましたが、廣田康人会長兼CEOによる経営改革により業績は回復。営業利益は4期連続で過去最高を更新しています。

 ランニング市場は世界的に広がり、中国では3億人のランナーが存在し、アメリカではZ世代のランニングクラブが流行中。日本国内でもラントリップなどのサービスを通じ、初心者から経験者までが楽しめるイベントやランニングステーションが展開され、都市開発や商業施設と連動した「ウェルビリング」施策で裾野を広げています。

 メーカー視点では、「箱根駅伝」が国内シェア競争の指標として使われているのは有名です。アシックスは過去に長距離界でナイキに厚底シューズの分野で先を越され、2021年の箱根駅伝ではアシックス製を履く選手はいませんでした。当時の敗因は「薄底シューズ」に固執したことだと指摘されており、その後アシックスは方針を転換。

 その結果、2018年から2024年までナイキの独壇場だった箱根駅伝のシューズ着用率は、2025年にはアディダスの36%に続き、アシックスも25%とナイキ(23%)を逆転しています。

「アシックスは2019年に『速く走ること』を徹底的に追求するCプロジェクトを発足しました。製品面では、高性能ランニングシューズ開発が特徴で、トップアスリートの声を反映。厚底・軽量シューズの開発に活かされています」(スポーツライター) 

 その結果、ストライドを伸ばす選手向けとピッチを高める選手向けの2種類のシューズを開発、129グラムの軽量設計でフルマラソン対応のアイテムもラインナップ。従来のシューズより軽量かつ反発力が高く、トップランナーのパフォーマンスを最大化する設計となっています。