■目黒蓮効果ではずみはつくか――

 さすがは目黒蓮、その存在感は抜群だった。花瓶に水を入れる動作や、箱の中で横になったシュークリームを元に戻そうとする動作など、ちょっと不器用で雑に見えるようなところなど、しばしば父親の耕造(佐藤)譲りであること感じさせるのに、その父親と対立するという難しい役どころ。セリフは少なかったが、所作や表情で耕一の感情をうまく伝える好演だった。

 今回はレースシーンはあったものの、これまでより競走馬の描写は少なめ。ただ、そのぶん登場人物をしっかり描いていて、日曜劇場らしい面白さがあった。競馬ファンには物足りなかったかもしれないが、これまでの弱点である“人間ドラマの薄さ”は解消され、今後、物語は盛り上がりそうなのだが……。

 気になる点が1つ。今後、物語は耕造から耕一(目黒)にバトンタッチするようだが、長い年月を描くこともあり、主要キャラが代替わりしそうなことだ。今回、栗須(妻夫木)の元恋人・野崎加奈子(松本若菜/41)の息子・翔平(三浦綺羅/12)がジョッキーを目指すと言っており、いずれ佐木(高杉真宙/29)と交代するのだろう。キャラが入れ替わることで見る側の思い入れも薄くなってしまい、いまひとつ盛り上がれない展開になるかもしれない。

 登場人物が入れ替わったとしても、じっくりその人となりを描けばいいのだが、通常、日曜劇場は全10話であるため、残りはおそらく5話。馬主も馬も代が変わると、そこまで深く描く時間がないだろう。もちろん、作品テーマが20年間かけた有馬記念への夢の「継承」である以上、主要キャラの交代は仕方ないのだが。

 原作小説は、2011年の耕一の登場から第二部「家族」となる。ドラマでは、次回は2017年の有馬記念終了後、耕造が来年の有馬記念を最後に自身もロイヤルホープも引退すると告げるという。残りの話数でどこまで描けるか分からないが、日曜劇場らしい満足度の高い展開に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。