■詰め込みすぎでカオス状態の『終幕のロンド』
今回はついに遺品整理のエピソードはなし。鳥飼(草なぎ)と真琴(中村)の大人の恋、真琴と夫・利人(要潤/44)との関係、こはる(風吹)の生前整理を描きたいのは分かるが、ゆずは(八木)の毒親エピソードをここまで引っ張る必要があったのだろうか。ほかにも、磯部(中村雅俊/73)の息子を含めた利人の会社社員の自死の隠蔽問題もあり、これでゆずはと矢作(塩野瑛久/30)の恋模様まで描くとなったら、さらなるカオス状態になるだろう。
圧倒的な包容力を表現する演技で、無理めな場面を成立させてきた草なぎだが、これ以上、話を広げると、いくら草なぎでも力技でまとめるのは無理そうだ。今回の終盤も、旅先で大雨による交通機関の運休で帰れなくなり、真琴が熱を出して2人で同じ部屋に泊まるというベタすぎる展開で、すっかり珍ドラマ化していた。鳥飼、真琴、利人が揉める流れにしたいのだろうが、とても令和のドラマとは思えない。
草なぎ、中村のほか、今回フィーチャーされた八木と塩野など、演者はがんばっている。脚本も、草なぎが主演し、東京ドラマアウォード2024の単発ドラマ部門グランプリを受賞した『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(NHK)の高橋美幸氏で期待が大きかっただけに、かえすがえすももったいない。
今後は、ボランティアで保護観察官もしている遺品整理会社の社長・磯部(中村)が、自死した息子に重ねて見ている、保護観察中の社員・高橋碧(小澤竜心/20)もフィーチャーされそうだ。いくらなんでも、これ以上、話を広げないほうが良いのではないだろうか。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。