■『宝島』製作費25億円の背景と“ヒット”にならなかったワケ――
11月13日時点で、『国宝』は東京都だけでも40館(※うち12館は『TOHOシネマズ』)で上映されている。一方で『宝島』は、東京では8館しか上映されていない。
「『宝島』の製作費は25億円と報じられており、このままではどう考えても大赤字ですよね……。
コロナ禍での撮影延期や、その他多くの事情から製作費が高騰。当初の予算からどんどん膨らんでしまい、結果的に25億円になってしまったとも言われていますね。アメリカ統治下時代の沖縄を再現するのに、オープンセットやCGにとんでもない予算が投じられたことは、映画を一目観るだけでも分かります。『宝島』の映像は、本当に素晴らしいんですよね……」(前出の芸能プロ関係者)
『宝島』の主なロケ地は沖縄。県北部名護市の辺野古地区にある「辺野古アップルタウン」に2か月半かけて組んだ「特飲街」のオープンセットほか、多数の場所で撮影が行なわれたという。多い日には300~500人のエキストラを動員する大規模なロケが行なわれ、エキストラの総数は5000人にも及んだという。
また、当時の米軍基地のゲート(出入り口)を起点とする、コザゲート通りの街並を再現するためのVFX作業を行なったカット数は、最終的に615に及び、約50人のスタッフが稼動したと映画公式サイトに紹介されている。
「大友監督の強いこだわりから、画面には映らないようなところまで徹底的にこだわり抜いて、細かい部分までセットが組まれたといいます。大友監督のクリエイターとしての情熱は物凄いですよね。
それは本当に素晴らしいことではありますが……現実的なところでは、画面に映らないようなところまで多くの予算が割かれれば、製作費はどんどん膨れ上がってしまう。“25億円”という邦画では普通考えられない莫大な金額の背景には、そうしたこともあるとも言われていますね」(前同)
『宝島』には、観た人からの《昔の沖縄、人達のエネルギーを感じれて、今にも通じる平和とはを考えさせられる》《戦後沖縄の知られざる歴史と、その中を生きる人たち一人ひとりのいわば「ほんとうの姿」が、胸の底をダイレクトに打つ名作中の名作》など好意的な声も多くあるが、
《エンタメ娯楽になりきれない政治色の強い映画で、非常に中途半端な立ち位置なんですよ。テーマは重いのに無理くりエンタメしてる感じ》
《沖縄の複雑な問題をストレートに表していて良かったです。ただ、けっこうバイオレンス》
《実話に基づいたフィクションだけあって見応えすごい。ただちょっと長すぎた。時間忘れるぐらいのめり込めるかっていうと、自分はそうでもなかった》
といった、作品の中身、尺の長さなどに難色を示す声も少なくない。
「制作陣はそれを描きたかったわけでしょうが、“戦後の沖縄とアメリカ”という軽くないテーマから、どうしても社会派や政治色の強い作品というイメージがついてしまい、それにより鑑賞を躊躇している人もいるようですね。また、観た人の声にもありますが、確かに一部の暴力シーンは生々しくハードな描写もありました。上映時間もたしかに、『国宝』と比べても長い。
『国宝』もカジュアルな映画ではないですが、『宝島』と比較すれば“歌舞伎に生きた男の一代記”ということでとっつきやすいと言えるし、“見るまでのハードル”というところで、『国宝』と『宝島』の明暗が分かれたのかもしれません。『国宝』に関しては、途中からどんどん良い口コミが広がり、“見るまでのハードル”はなくなりましたしね。
“観る人を選ぶ作品”というのは否定できない感じの『宝島』ですが……映画としては本当に素晴らしいと感じました。知らなかった沖縄のリアルな歴史が知れるし、妻夫木さん、窪田さん、広瀬さんはじめ俳優陣の熱演は称賛に値します。そして、巨額製作費はかかったかもしれませんが、大友監督が生み出した映像も圧巻。3時間強ずっと、隙のない濃厚な映像が流れているんです。ぜひ、大画面の映画館で観ておく作品だと思いますね。
一部の鑑賞者からは“2025年で1番の作品”という声も出ているだけに、数字が伸びないのは残念ですね……」(同)
製作費12億円の『国宝』と25億円の『宝島』――完成までに巨額のカネが費やされた2つの映画だが、興行収入の明暗はくっきりと出てしまったようだ――。