相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 中盤戦を過ぎた大相撲九州場所。今場所、「台風の目」になりそうなのが、新関脇の安青錦(21)と、前頭筆頭の伯桜鵬(22)だ。

 なにしろ安青錦は入門以来、負け越しが一度もない。今年春場所で新入幕を果たしてから、4場所連続11勝で、一気に関脇に。前傾姿勢を崩さない独特の相撲スタイルが、他の力士に覚えられてくるかと思っていたが、それ以上に、本人は稽古を積んでいるようだ。

 10月のロンドン公演で、他の関取衆が観光を楽しむ中、ジムを探して筋トレをしていたというんだから、本当に真面目なのだろう。

 一方の伯桜鵬は、「白鵬の弟子」として入門し、幕下付け出しのデビューから、1場所で十両に昇進。「令和の怪物」と騒がれたが、その後、ケガの影響で低迷。 白鵬も相撲協会を辞め、今は、元照ノ富士の伊勢ヶ濱部屋で厳しく鍛えられているというのも好調な要因だろう。名古屋場所、秋場所と横綱・大の里から金星を獲得、今場所も横綱・豊昇龍から金星を挙げている。来場所は念願の三役昇進も堅いと思うよ。

 そんな中、時代の流れを感じさせられるニュースもあった。2013年に入門以来、「スー女ブーム」に火をつけた遠藤の引退だ。

 引退会見では、「悔いは一切ないです。本当にいっぱいいっぱい、やり切りました。幸せな相撲人生でした」と、笑顔で語った遠藤。

 ふだんから寡黙で、めったに笑顔を見せない遠藤の、心からホッとしている表情は印象的だった。