■相撲センス抜群 記憶に残る遠藤

 実は、オレは遠藤のことを小学生の頃から目を付けていた。「(石川県)穴水町に強い子がいる」と聞きつけ、現地へ飛んだこともある。中学を卒業したら、ぜひウチの部屋(大嶽部屋)に入門してほしいと思ったからだ。ところが、すでに遠藤は地元の先輩でもある大翔山(追手風部屋)のところに行くことが決まっていたんだ。金沢学院東高から、日大相撲部に進んだ遠藤は、「予定通り」追手風部屋に入門した。

 オレが3000〜4000万円でも積んだというのなら、話は別かもしれないけれど、「学閥」「地元つながり」で固められたら、横ヤリは入れられない。

 ただ、そんな経緯があったから、遠藤のことはずっと気にして見ていた。体は大きくないけど、相撲センスは抜群。でも、途中で膝の負傷を負ったのは残念だった。引退の原因も、7月に受けた両膝の手術だったが、引退後に歩くのが不自由になってしまったら、大変だからね。潮時だったんだと思うけど、「記憶に残る相撲取り」だった。

 年寄・北陣として、部屋を創設するのかは分からないけど、これまでみたいに寡黙なままでは、弟子のスカウトはうまくいかない。しゃべりのほうも慣れていったほうがいいと、アドバイスを送りたい。

貴闘力忠茂(たかとうりき・ただしげ)
1967年9月28日、兵庫県生まれ。二子山部屋(入門時は藤島部屋)入門後、83年に初土俵。最高位は東関脇。2000年に幕尻(前頭14枚目)で初優勝する。02年に引退し、大鵬部屋の部屋付き親方となるが10年に野球賭博関与のため日本相撲協会を解雇される。現在は焼肉店『ドラゴ』を経営。