■『もしがく』の失敗は予想できたか
X上の声も、《菅田くん演じる演出家の立ち位置がイマイチわからない。ひとりひとりが主役を張れる様な俳優陣をあれだけ集められるなら、単純に新人演出家として癖あるスタッフや役者、観客達に揉まれながら、ひとつの芝居を作り上げていくというベタな展開の方が面白くできたかも?》などと、失望というより冷静に問題点を指摘する声が多い。熱心なドラマファンだけが、怖いもの見たさで視聴を続けているのだろう。
本作のうたい文句は、“希望と熱気が充満した「1984年の渋谷」を舞台に若者たちのくすぶり、情熱、苦悩、恋を描いた青春群像劇”というもの。その群像劇をこのキャストが演じるとなれば、期待するなという方が無理。しかし、蓋を開けてみれば、ずいぶんとお粗末なものになってしまっている。指摘どおりにベタな作りにしておけば、演者の力ではるかに面白いものになっただろう。
一方、脚本の三谷氏は公式サイトで「大風呂敷を広げてみましたが、実際出来上がった台本は、限定された場所と時間と人物による、かなりこじんまりした感じになっています」とコメントしている。スケールの小さいドラマになることは制作側もわかっていたはずだ。それでも、このキャストならいけると踏んだのだろうが、期待通りの出来にならなかった。
そもそも、「限定された場所と時間と人物による、かなりこじんまりした感じ」は三谷脚本の特徴のひとつ。それと豪華キャストの組み合わせがうまくいかないのは、制作陣の判断ミスといえるだろう。見る側にとっても演者にとっても、『もしがく』は不幸な作品だと言えるかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。