■「ゲロ」歌詞部分にピー音が入った“経緯”を直撃

 では、どういった経緯で「ゲロ」の部分にピー音が入ったのだろうか。USENの担当者に問い合わせたところ、

「USENでは、権利元から提供される正式なマスター音源もしくは購入音源を基本そのまま使用しており、USENで歌詞の一部を編集したり、ピー音を加えたりすることはありません」(USEN担当者)

 との回答があった。今回の件については、

「権利元であるソニー・ミュージック様が自主的にピー音処理を行ったバージョンをマスターとして提供されており、USENでもその公式音源を使用しています」(前同)

 という。つまりレコード会社の判断で「ゲロ」という言葉がピー音で消されているというわけだ。また、USEN側が曲について“問題”と感じた場合については、こんな処置をとるという。

「USENでは、歌詞に不適切な内容が含まれている場合、音源を編集するのではなく、選曲しない(放送しない)という運用を行っております。そのため、USEN側の判断で歌詞を伏せたり加工したりする事例はありません」(同)

 いかなる場合もUSEN側が音源に手を加えることはないとする。前出の音楽業界関係者が言う。

「アーティストがテレビで楽曲を披露する際に、固有名詞が一般名詞に変わるなどのケースはいくつかありましたが、BGM用の音源だけにピー音が入るのは、日本国内の楽曲では珍しいケースかもしれません。海外のアーティストの場合、ラジオなどの放送用に“汚い言葉遣い”を修正した“radio edit”バージョンを作るケースもあります。レーベル側もしくはアーティスト側がオリジナル版と修正版を用意するという形で、歌詞に対する自主規制を行うのが一般的なのだと思います」

 どのような表現が自主規制の対象になるのかも気になるところ。その基準についてソニー・ミュージックに問い合わせたものの、期日までに返答はなかった。

「“ゲロ”という言葉と飲食店との相性が悪いのは言うまでもありません。特に米津さんは日本を代表するアーティストで、あらゆる場所でBGMとして使用される頻度が高いので、不適切だと判断される基準は少々厳しいのかもしれません。ピー音での処理は、作家性を尊重したうえで公共性を意識した判断だったと捉えられます」(前同)

 地上波ではまだ『IRIS OUT』を披露したことがない米津。もしパフォーマンスをすることになったら、“ゲロ”の扱いはどうなるのか……。