■大河ドラマにしかできない伏線回収
X上では、《衝撃のラストに「そう来たか…!」と唸らされた。ずっと平行に描かれていた蔦重の世界と政の世界がここに来て深く交わる事になろうとは》《この急展開、史実よりも娯楽性に振り切っていて、まさに現代の黄表紙じゃないか。1年かけてめちゃめちゃ精密かつスケールの大きい戯作をご用意された感じ》などと、絶賛と期待の声であふれた。
ことあるごとに長谷川平蔵をちょいちょい出していたのも、定信の黄表紙好きをアピールしていたのも、重要人物に見えない三浦がやたら出ていたのも、すべて今回のため。1年かけた伏線回収は、まさに大河ドラマならでは。鬱展開の連続でも離脱することなく、見続けてきた人だけが味わえる興奮だった。
また、脚本家・森下佳子氏の、史実とフィクションの絡ませ具合も絶妙。江戸時代の物語で、しかも出版絡みの内容だと書籍として記録が残っているから、史実の縛りが多いはず。だが、江戸城内の権力闘争に関しては曖昧だから、いろいろな手が打てる。そこに源内生存説を絡め、見事なエンタメフィクションに仕立てた回だった。まさに脚本の勝利だ。
ここまできたら、源内の魂を加えた打倒治済アベンジャーズの7人、“七ツ星の龍”に思いきり暴れてもらいたい。もうひとつのヤマになるであろう、写楽の正体はここにどう絡むのか。楽しみな最終盤になりそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。