■1か月どのくらい痩せるのを目指すのが良いのか? の意外な回答
――1か月ちょっとで16キロ減というのは、身体にとって良いことなのでしょうか? 急激なダイエットのデメリットはありますか?
「今回の場合、着目点は“これほどに短期で痩せてよいのか?”という点かと思います。
まず基本的には、多くの方にとって推奨されることではないかと思います。体重が増えるのも減るのも、急激な変化は身体のトラブルを招きかねません。
たとえば、急激に体重を落とすための努力をし続けると、甲状腺機能が下がることが懸念されます。無理な減量を頑張りすぎて甲状腺機能低下症になってしまった人をたくさん見てきました。なので、この点については注意喚起をお伝えしたいところです。
では、Mattさんは今回の減量で自身の身体にとって悪いことをしたのか? 正直それは分かりません。何とも言えないです。確かに負担はあったかも知れないけど、ここからの生活を適度な生活にしておいて、常に体調をモニターすれば問題はないのかと思われます。
Mattさんはもともと、体重64キロくらいを維持なさっていたということで、その基準までの減量を狙うことは危険な目標ではありません。確かに少しスピードは早かったですが……。
芸能界ではよく急激な体重コントロールを求められることもありますし、今回Mattさんも何か急ぐ目的があったのかもしれません。業界人の体重増減については、我々一般人とは別物だと思っておくことが良いかと思います」
――人によって個人差はあると思いますが、ダイエットは1か月どのくらい痩せるのを目指すのが良いのでしょうか?
「よくネットでは、1か月に1〜5%程度の範囲で目標設定するように書かれます。
私も過去には同じような意見を持っていましたが、今は“どれくらい痩せるという目標設定自体が邪魔をすることがある”と考えています。
目標設定があるから頑張れる人もいるでしょうが、目標設定によってやる気を削がれるケースも多くあります。特に何度もダイエット・減量を失敗している人ほど後者です。
人の身体の体重調整は、機械のように正確ではありません。算数のように簡単ではありません。“これくらいやれば1か月で○キロ痩せるだろう”などという期待は簡単に裏切られます。
期待通りにならなかった時に、脳内のドーパミンが不足してまるで失敗した時のような脳内情報処理が行なわれます。多少の成果が出ていたとしても、です。なので、期待値を上げないために目標設定をしない方がよい場合が多いですね。
これは、ダイエットがスムーズに進んだ人には理解できないことなんです。食べないようにして、運動すれば痩せるでしょ! と考える人が多いですが、体内が複雑な人はいます。ダイエット・減量に悩んでいる人ほど、目標設定をせずに食事管理や運動を実行してみてください」
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どうやら、Mattの“1か月ちょっとで16キロ減”というのはかなり特別なことのようだ。おいそれと彼を見習ってチャレンジするのは、やめておいた方がよさそうだ。
計太(けいた)
1989年、奈良県生まれ。大阪教育大学スポーツ科卒、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。専門は運動生理学。東京を中心にパーソナルトレーニングジム「ボクノジム」を経営。
YouTubeなど各種SNSで理論的かつ実践的なダイエットやトレーニングに関する情報を発信中。YouTubeチャンネル『ダイエットコーチ計太』は登録者12.7万人(2025年11月現在)を誇る。