■目黒蓮が物足りなかったか
一方、耕造(佐藤)と耕一(目黒)親子の関係は、1話をかけても少し距離が縮まった程度。競馬シーンは盛り上がったものの、競馬以外のドラマは薄味だった印象は否めない。栗栖(妻夫木)の野崎加奈子(松本若菜/41)へのプロポーズシーンも、もうちょっと前フリが効いていたら、彼女の「馬じゃなくて自分で決めさせて!」というセリフの説得力が増したのではないだろうか。
競馬と人間ドラマは本作の両輪であり、そのバランスをとるのは難しく、どっちに偏っても食い足りないものになってしまう。今回は競馬寄りのバランスだったため、前回、目黒の本格登場で盛り上がった、隠し子をめぐる人間ドラマに引き込まれた視聴者は、期待外れだったかもしれない。
本作は原作ありのドラマだが、物語を盛り上げるために改変はされている。たとえば今回では、原作では2013年に耕造が亡くなっているが、ドラマでは2017年にロイヤルホープとともに引退宣言しており、時系列がズレている。
脚本の喜安浩平氏もその悩ましさを《極力原作と同じ戦績を辿れるよう努力していますが、一方で原作とは違う年から物語が始まったり、各話で時間経過に濃淡があったり、悩ましいところは沢山ありました。ダービーの年の有馬とかね、どうだったんかな〜と思いを馳せながら最後の挑戦を描かせていただきました》と、Xにポストしている。
20年という長い年月を10話で描くため、いろいろ苦労はありそうで、競馬とドラマのバランスが回によって違うのも仕方ない。ましてJRA全面協力。迫力あるレースシーンをふんだんに使いたくなるのも無理からぬ話だ。物語は後半戦に入るが、盛り上がりの鍵は競馬のレースと人間ドラマのバランス次第となりそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。