■『じゃあつく』が見たくなる理由

 そして、竹内の素晴らしい演技だけでは終わらない、『じゃあつく』人気の理由――もう1人の主人公である鮎美役の夏帆だけでなく、主人公2人の周囲の登場人物も、演者含めて魅力的なキャラクターが多く、それもドラマを見たくなる理由として挙げられるという。

中条あやみさん(28)演じる、勝男(竹内)の女友達・柏倉椿。鮎美と交際をするも、価値観の違いから最終的に破局してしまった青木柚さん(24)演じるミナトくん。勝男の後輩女子で杏花さん(26)演じる南川あみなど、周囲の登場人物が総じて魅力的という声が多いですね。

 どの登場人物も、いわゆる“舞台装置”という感じがせず、共感できるところがあって現実にいそうな人物ばかりです」(テレビ誌編集者)

 たとえば、ミナトは女性にモテモテでありながら、結婚願望がない。そのため鮎美とも破局したわけだが、それを南川に「本気じゃないなら別れて正解ですよ」とフォローされると、「本気だったよ」と、真剣な顔で返す場面があった。

 よくありがちな“結婚の意思がない=真剣ではない”という流れにはならず、「どっちかの名字にしたり、生活スタイル変えたり、親せきづきあいとかしたり。それってもう個々がなくなってる気がする」(ミナト)――つまり“『自分』を失いそう”という理由から結婚が怖いというリアルな心理が描かれ、話題となった。

 そのほかにも、古い価値観に縛られてしまっている主人公の実家問題、世間で料理好きを「料理男子」と一括りにされがち問題など、登場人物を通じて描かれる多くの物語は視聴者の共感を呼び、

《ミナトが結婚したくないって、チョウチンアンコウ(※メスとオスが最終的に一体化する)の例出していたのも凄くわかりやすかったし、私は女だけどかなり共感した。個じゃなくなる感じ。逆に南川さんが「もう一人で頑張らなくていいってこと」と解釈したのも目から鱗だった…!》
《典型的な亭主関白指向の夫に、お母さんが本音を爆発させるような場面があるかと思ったけど、彼女自身、現実に折り合いをつけながら、「女の子のランドセルは赤」とか、古い考えに何の疑問もなく浸った人でもあるというのが、ある意味一番リアル》
《めちゃくちゃ考えさせられる部分や共感する部分多くて、毎週どんどんおもしろくてしかたない!》
《(※主人公カップルの故郷)大分の何とも言えない男(ジジイ)感が綺麗に描かれてて共感だわ、、、そして、カツオが現代に生きるにはダメだ、って気づくのも綺麗に描かれててよい!!!》

 など、多くの場面で“共感する”という意見が多く寄せられている。

「そして、脚本や俳優陣の魅力を、演出面がより一層引き立てている感じです。たとえば、“どうしてこうなったか”を描く際には、単純に回想に入るのではなく、“配信ドラマのあらすじをクリックする画面”のようなイメージ映像から展開するなど、視聴者の目を引く凝った演出が多いんです。

 また、主人公・勝男は劇中でのトレンディドラマ『フォーエバーラブは東京で』を“完璧な男になるためのバイブル”として毎回視聴していますが、話が進むにつれて“崖から突き落とされた男がワカメまみれで生還する”など意味不明になっていく遊び心もある。演出面がキレキレで、それも人気につながっているところがあるのでしょうね」(前同)

 主人公・勝男を演じる竹内の演技面、魅力的なサブキャラクター、視聴者の共感を呼ぶシナリオと、それを引き立てる演出のうまさ――そんな“見たくなる要素”が揃う『じゃあつく』の魅力について、ドラマライター・ヤマカワ氏はこう言う。

「勝男の同僚・白崎(前原瑞樹/33)や南川、椿など、周辺キャラが魅力的なのも本作の人気の理由でしょうが、回を増すごとに愛すべきキャラに成長している、勝男の存在がやはり大きいですよね。

 第7話(11月18日)も、勘違いした上司にサンバを勧められたら、本当に父親の前でサンバを踊ろうしたりと想像の斜め上を行く行動は好きにならずにはいられません。どんどん成長していくのに、ファッションセンスだけは変わらないところも含め、最終回まで目が離せません」

 TBS系火曜ドラマは「ラブコメ枠」というイメージもあるが、『西園寺さんは家事をしない』(24年7月期)、『対岸の家事』(25年4月期)など、家事や育児に対する価値観を問うタイプの作品に強い枠だとも言われている。まさに価値観が問われている『じゃあつく』も、同様のようだ。

ドラマライター・ヤマカワ
 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。