■イベント主催者サイドが最も恐れる事態とは
複数のアーティスト、タレントの中国でのコンサート、イベントの中止が発表される展開になっているが、近年、エンタメ界において中国は“仕事場”のひとつになっていた。
広告代理店関係者は話す。
「日本のアーティストやアイドル、俳優は東アジアを中心に人気ですし、アニメや特撮などのコンテンツも大人気ですよね。当地のイベントなどにもよく呼ばれますし、開催されたイベントでグッズなどが売れたら、企業、芸能人、プロダクションにとっても大きな収入になる。
中国は圧倒的な人口を誇りますし、現地には日本以上に熱心なファンが多い。物販にもたくさんお金を使ってくれますし、お金の面だけを考えれば、日本のエンタメ界にとって魅力的な場所です。
現地での待遇もよく、一流のホテルや移動の飛行機もビジネスクラスを用意してくれたりで、芸能人、そしてプロダクションとしても“おいしい仕事”と言え、中国でどんどんイベントをやってファンを増やしていこう、という動きもあったのですが……ここにきての日中関係の悪化でその動きはなくなりますよね」
前出の広告代理店関係者は続ける。
「ただ、こうなる前から、中国でイベントなど仕事をする芸能人には気をつけることがあった。それが、台湾のことなんです。気をつける理由ーーそれは、中国のイベントなどの主催者サイドから直接“お願い”がくるからです。
“お願い”とは具体的には、台湾の国旗が写り込む写真、明らかに台湾だとわかる場所で撮影した写真などをSNSに投稿しないようにしてください、というものです。さらに、自主規制する芸能人もいますが、“台湾でも応援されている”などインタビューでも台湾を上げるようなことを言わないで、とも。
あくまでも主催者側の“お願い”ではあるのですが、こういった“お願い”を出してくるのは主催者にそういう考えがあるからではなく、また中国人ファンの怒りを買うからでもないんです。主催者側が恐れているのは、中国政府に目をつけられることなんです」
11月20日には、24日にマカオでの開催を調整していた日本・中国・韓国の3か国文化相会合について、中国側より「開催を見送りたい」との連絡があったとも報じられた。
「強硬な姿勢を見せる中国政府ですが、政府に目をつけられたらイベントを開催しづらくなったり、最悪の場合、急に会場が使えなくなることがあるといいます。中国政府に睨まれたら、そういう理不尽なことが起きてしまうといいますね。会場が使えなくなれば、コンサートやイベントを行なうことは絶対にできないですからね。ですので、そういう事態を引き起こさないようにと、主催者側が台湾の扱い方について“自主規制”をお願いしてくるということなんです。
ただ、こういう事態になってしまい、現地のイベントなどの主催者も日本のエンタメ界の方も戸惑いつつも、国と国の問題なのでどうしようもない……となっていますよね」(前同)
この問題は、長引くことになりそうだが――。