日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。日に日に寒くなる今日この頃、冬の定番料理・鍋に新たなブームが到来しているようで……。

 気温が下がり、湯気が恋しい季節になりました。

 いま外食業界で注目を集めているのが「アロマ鍋」。ぐるなびが毎年発表している「トレンド鍋(R)」で、2025年のテーマに選ばれた新ジャンルです。キーワードは“香り”で、ハーブやスパイス、柑橘類の香りを生かし、五感で味わう鍋として人気が高まっています。ぐるなびによると、「ハーブ」の検索数はこの1年で約1.7倍、「セリ」は2年で約1.6倍に増加。香辛料やハーブへの関心が広がるなかで、香りを楽しむ食体験が新たな潮流になっているといいます。

 実際に都内では、香りをテーマにした鍋メニューを展開する店が増えています。有楽町の『味噌と鮮魚と純米酒 穂~みのり~』では、柚子とセリを合わせた『和芹と若鶏の柚子味噌アロマ鍋』が登場。ふわっと香る柚子の香気と、味噌のまろやかさが調和した一品です。神田の『九州炭火酒場 ばってん 神田西口店』では、レモンや柚子を浮かべた『柑橘アロマ鍋』が人気。さっぱりとしたスープに爽やかな酸味が広がり、食後まで香りが残ると評判です。麻布十番の『博多ほたる』では、もつ鍋と薬膳を掛け合わせた『薬膳きのこもつ火鍋』を提供。花椒やスターアニスなどのスパイスが立ちのぼり、香りの層が幾重にも広がります。味だけでなく、香りの余韻を楽しむ鍋…まさにアロマ鍋の真髄と言えそうです。

 一方、家庭用の鍋つゆ市場にも新しい動きがあります。鍋つゆの市場規模は2010年から20年までの10年間で279億円から448億円へと急成長しており、ここ数年も堅調な推移。中でも、1人前ずつ個包装になった“個食鍋”タイプが人気です。個食鍋つゆは市場全体の売上の約2割を占めるまでに成長しているとも言われており、コロナ禍を経て「自分専用の鍋を安心して楽しみたい」という意識が消費者の間で根付いていることを強く伺わせます。